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『ザ・ノンフィクション』職場との相性は「運」なのか「人力車に魅せられて2 ~夢と涙の軽井沢物語~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月16日の放送は「人力車に魅せられて2 ~夢と涙の軽井沢物語~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 2022年7月3日の放送で、浅草の人力車業を営む東京力車の社内検定に12回落ち、俥夫(人力車の運転手)になることが叶わないまま、東京力車を去った当時30歳のアツシ。

 その後の8月、31歳になったアツシは長野・軽井沢町で別の人力車屋さんで研修を受けていた。軽井沢で人力車業を営むてやんでぃ屋社長・高山が、前回の放送を見て、アツシと連絡を取りたいとフジテレビに問い合わせたのだという。

 高山はアツシについて「(俥夫として)全然イケるやん」と番組スタッフに話し、卒業検定に何度落ちても辞めなかった熱意も評価して、「この子はもったいないな」と思ったという。また「結構打算的なところがあって、うちでも人材欲しいし、(アツシは東京力車で)研修もほとんど終わっているし、この子は楽だなと思って」とも話す。

 アツシも誘いに即決だったそうで、繁忙期である8月の間、アツシはてやんでぃ屋で研修生として働くことになる。

 てやんでぃ屋は街なかを走る浅草とは異なり、主に軽井沢の森の中を走る観光コースになる(万平ホテルや、上皇さまが美智子さまと出会ったテニスコートの脇も通る)。自動車は入れないであろう遊歩道もあり、交通量も浅草よりはずっと少ないが、一方、舗装されていない砂利道や段差も多い。

 東京力車の最後の日々について、(きつすぎて)訳がわからなかったのではないか、と同僚に尋ねられたアツシは、「メンタルボロボロでした」と振り返る。高山は「それがあるから今がある」「もう本当に、だから(てやんでぃ屋の)研修楽やん」と話す。実際にアツシのてやんでぃ屋の研修はスムーズに進む。

 ただ、交差点の手前での減速や一時停止を怠ってしまう以前からの欠点は軽井沢でも見られヒヤヒヤしたが、高山は「この弱点を直さなくていいの、自分はそういう人間だと思って仕事すればいい」「自分の弱点を克服するんじゃなくて、受け入れて、その弱点の中で生きていく」とアツシを励ます。

 その後、てやんでぃ屋の社内検定にアツシは無事合格。21年9月に東京力車に入ってから1年弱で、ようやくアツシは客を乗せるプロの俥夫になった。

 そんなアツシを高山はドライブに誘う。16年に発生した大学生ら15人が亡くなったスキーバスの事故現場の慰霊碑にアツシを連れていき、「(スピードを出すのがカッコいいのではなく)安全運転で、ゆっくり丁寧にやることがカッコいいんよ」と諭す。

 順調にてやんでぃ屋で仕事をしていたアツシのもとに、東京力車の後輩の金光から人力車の予約が入る。だが、当日そこにいたのは金光ではなく、東京力車の社長・西尾と、アツシの社内検定のために尽力した教育係・押木の2人だった。

 アツシは西尾や押木にロクに別れも言わない状態で辞めた手前(西尾とアツシの最後のやりとりは電話だったようだ)、この再会に緊張していたが、西尾、押木ともにアツシの人力車と案内のもとで、軽井沢を満喫する。

 8月の終わり、アツシはてやんでぃ屋の月間MVPとなり、てやんでぃ屋の面々に見送られ軽井沢を去る。現在アツシは鎌倉で俥夫として働いている。

 前回、東京力車でのアツシは、後輩たちが次々と俥夫として自分を追い抜いていく中で、どんどん精神的に追い詰められているように見えた。そのため、もっと早く東京力車を辞めたほうがよかったのでは、とレビューに書いた。

 同じミスを繰り返してしまうアツシを教育する押木の負担もあるし、何より社内で「卒業検定に落ち続けている気の毒な人」と思われながら過ごすのは、アツシの精神衛生に良くないように思えたからだ。

 しかし今回見てみると、東京力車の厳しい研修があったために、てやんでぃ屋でアツシはスムーズに研修を終えることができたし、てやんでぃ屋にしてみても、繁忙期に未経験の新人を育てることは難しかっただろうから、東京力車での研修は助かったと思う。

『ザ・ノンフィクション』仕事は結局「運」なのか

 番組の最後のナレーションでは「人には、同じ仕事をしていても合わない職場もあれば妙にしっくりくる職場もあります」「突き詰めてしまえば、それもまた運次第なのかもしれません」と伝えていた。

 「運」というと身もふたもないが、しかし確かに仕事生活は「運」の要素も大きいと思う。上司やクライアントが一人変わるだけで天国から地獄にもなりかねない、結構はかないものだ。

 だからと言って「結局運なのだから、職場が合わなければさっさと辞めればよい」とも一概に言えないなと今回の放送を見て気づかされた。

 アツシは、東京力車をなかなか辞めなかったことで、てやんでぃ屋からスカウトされ、俥夫としてデビューでき、西尾や押木と俥夫として再会でき、浅草での苦かったであろう過去とも折り合いをつけられたように見えた。もし、早いうちに見切りをつけていたら、ただの「挫折」「苦い経験」で終わっていたのかもしれない。あらためて「辞め時」の難しさを思う。

 次週は「あの日 僕を捨てた父は~孤独な芸人の悲しき人生~前編」。幼い頃から没頭してきたゲームの腕でファンを魅了するゲーム芸人・フジタ。小学2年の彼を35年前に「捨てた」父親が、全財産を遺すと伝えてきて……。

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