軍などの役職やHRH(殿下/His Royal Highness)の称号を女王に返上し、英王室の公務から引退したアンドリュー王子が、高位王族として復帰する可能性が出てきたと英メディアが報じている。王子から性的暴行を受けたと民事訴訟を起こした女性が、有名弁護士を相手取り起こしていた同様の訴訟を「人違いだったかもしれない」と取り下げたからで、裁判で和解はしたものの「自分はやっていない」と一貫して否定してきた王子にも名誉挽回のチャンスはまだあるというのだ。
昨年、少女売春のあっせんをしていた故ジェフリー・エプスタインの性奴隷だったバージニア・ジュフレさんから「17歳の時に性的暴行を受けた」と民事訴訟を起こされ、1,200万ポンド(約19億7,600万円)とも伝えられる莫大な和解金を支払うことで裁判を決着させたアンドリュー王子。和解により王室の尊厳はぎりぎりのところで保つことができたが、王子に対する世間の目は冷たく「ペドファイル(小児性愛者)」のレッテルを貼られたまま。王子は公務から完全に退くことになった。
そんなアンドリュー王子だが、ほとぼりが冷めたら公務に復帰するきっかけをつくってほしいと、エリザベス女王に懇願していたと伝えられている。王子に甘かったとされる女王はのらりくらりとかわしていたが、新しく君主となったチャールズ国王はアンドリュー王子に厳しく、彼の「王族としての公的生活は終わりだ」と王室追放を通告。王子は絶望の淵に突き落とされたと報じられたばかりだった。
国王の言葉に絶句し、絶望の色を隠せないでいたとされる王子だが、英紙「デイリー・テレグラフ」は、彼を訴えたバージニアが、ハーバードロースクールの元教授で有名な弁護士のアラン・ダーシュウィッツに対して起こした同様の訴訟を「記憶違いかもしれない」と取り下げたことで、王子もこのスキャンダルを乗り越える可能性が出てきたと報道。
アンドリュー王子の友人で国際弁護士であるポール・トウィードの、「(未成年に対する性的暴行)という深刻な主張を、裁判を起こした後に取り下げることは異常だ」という見解を紹介した。
さらに、すでに和解しているアンドリュー王子に関しても「記憶違い」だった可能性があることを示唆。「(無罪を主張しているアンドリュー王子は)最初から明確に事実ではないと主張すればよかった」「和解すべきではなかった」「(戦わなかったため)壊滅的な結果を招いてしまった。本当にもどかしく思う」と述べ、王子の公務復帰について「舞台は裁判所から世論へと移っているが、乗り越えられないことはないと思う」と語った。
また、英大手タブロイド紙「デイリー・メール」は、バージニアがアランに対する訴訟を取り下げたことで、アンドリュー王子の状況は一転。一貫して無実を主張してきた王子は、公務復帰できるよう「戦う決意をした」と報道。
加えて「ザ・サン」は、アンドリュー王子に近い情報筋の話として、「王子は(王室を守るために)和解したことを後悔している」「(自分が守った王室から)高位王族を引退させられたのは不意打ちだった。引退しろと強いられたのだ」と報じ、アランに対する訴訟を取り下げたことで王子も公務に復帰する道が見えてきたと「勢いづいている」と伝えた。
対して、「メトロ」は、王室の伝統であるサンドリンガム・ハウスでのクリスマス休暇に、アンドリュー王子も招待されていることは間違いないが、チャールズ国王は王子の公務復帰はまったくもって考えていないと報道。
この報道に対する世間の反応は冷ややか。今年に入り各メディアが「アンドリュー王子は寝室に72個のテディベアを並べており、きちんと配置されていないとヒステリックに怒鳴る」と報じたこともあり、ネット上では「いろいろな意味で気味が悪いから復帰してもらいたくない」といった声が多いようだ。
現地時間14日、「カウンセラー・オブ・ステート(国務参事官)」に高位王族であるアン王女とエドワード王子を追加するよう求めるチャールズ国王からの書簡が貴族院で読み上げられた。公務を引退したアンドリュー王子、ヘンリー王子の代わりということになり、事実上、公務をしない2人の王子は用無しとだとささやかれている。
22年間王立海軍に所属し、フォークランド紛争ではヘリコプターのパイロットとして活躍。軍への未練が強いとみられているアンドリュー王子。「スペア」として王室に尽くしてきた彼がスキャンダルを乗り越え、高位王族に復帰し、再び軍服を着る機会を得ることがきるのか――今後の展開に注目したい。