• 日. 12月 22nd, 2024

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King&Princeの空中分解を招いたジュリー氏……経営のプロが語る「ジャニーズ事務所立て直し」のためにすべきこと

 ジャニーズ事務所副社長およびジャニーズアイランド社長を務めた滝沢秀明氏の電撃退社、King&Prince(以下、キンプリ)・平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太の脱退・退所発表と、激震続きのジャニーズ事務所。

 前編では、“組織のプロ”である企業コンサルタント・大関暁夫氏に、滝沢氏退社の背景に見え隠れする、藤島ジュリー景子社長の力関係についての見解をお聞きした。後編では、キンプリ分裂に見るジュリー氏の過ち、また事務所を立て直すために取り組むべきことについて考えていく。

(前編はこちら)

King&Princeの空中分解を招いたジュリー氏の問題点

――キンプリの平野、岸、神宮寺が脱退・退所を選んだ背景には、デビュー当時に掲げていた「海外で活躍できるグループになる」という目標が、このままでは達成できないという葛藤があったようです。キンプリのマネジメントはジュリー氏が担当していただけに、グループの空中分解は彼女にも責任があるように思います。

大関暁夫氏(以下、大関) 「海外で活躍するグループになる」というのは、ジャニー喜多川氏との約束だったそうですね。韓国のBTSなど、アジアから世界的に活躍するスターが次々と現れる中、「ジュリー氏の元で海外進出は無理」と実感したのかもしれません。それが、脱退・退所の引き金にはなったことは十分に考えられるでしょう。やはり、カリスマ経営者だったジャニー氏の「世界を目指せ」という言葉は強い。カリスマの裏付けがないジュリー氏とは説得力が違います。

 ジュリー氏は代替わりに際し、経営の仕方を変えるとともに、タレントたちに新たな路線をしっかり提示する必要があった。それをしないまま、先代のカリスマが作った路線に何となく乗っかっているだけでは、必ず限界が来ます。キンプリはじめ、相次ぐタレントの退所は組織管理が崩壊しつつあることの現れですから、ジュリー氏は危機感を持ち、「組織を変えていく」と意識すべきでしょう。そうしなければ、人材流出は今後も止まらないと思います。

――今後ジュリー氏は、事務所を立て直すために何をすべきなのでしょうか。

大関 組織運営の透明化です。そのためには、自分の意見だけでなく、周りの意見を聞くことが第一条件になります。では、具体的に何をすればいいのかというと、まず社外取締役を入れ、第三者に経営の監視をしてもらうのです。

 滝沢氏が電撃退社した背景に、組織内部での軋轢があったことは想像に難くありませんが、もし会社経営に精通した社外取締役がいたら、また話は違ったのでは。例えば、滝沢氏とジュリー氏の意見がぶつかった場合、社外取締役がいれば、役員会で第三者の立場から双方の意見を聞き、「組織運営上、どちらのほうが理にかなっているのか」などを提言してくれたと思います。社外取締役の言葉は説得力がありますから、双方も納得しやすく、不満が大きくならなかったのではないかなと感じますね。

――社外取締役には、どのような人物がふさわしいのでしょうか。

大関 直接の利害関係がないまったく別の業界の企業運営に精通した人物、あるいは弁護士などの専門家です。逆に、自分の息のかかった直接の利害関係がある人物を社外取締役に選ぶのは間違っています。例えばレコード会社やテレビ局の人間を選んだ場合、何かあった時、ジャニーズサイドが「おたくの会社からはCDを出さない」「おたくの局にはタレントを出さない」と言いだしかねませんから。なお、社外取締役の人数は、取締役会の過半数は必要でしょう。ジュリー氏の意見よりも社外取締役の意見が強い状況を作るのが、組織運営の透明化の第一歩です。

――次のステップは何でしょうか。

大関 株式公開(自社の株式を証券取引所に新規上場させること)です。これも一般株主という第三者に経営を監視させる意味合いがあります。社外取締役も一般株主の承認が必要になりますし、さらに透明化が進むでしょう。

 株式が公開されれば、ファンが株を買うでしょうから、ジャニーズ事務所はファンの声に耳を傾けざるを得ないことになります。ファンと社外取締役の声をうまく取り入れながら組織運営をしていけば、タレントたちも事務所の決定に対し、「経営に詳しい人とファンがそう言っているのだから」という納得性が生まれ、不満も出にくくなるはず。

 ジャニーズ事務所の社会に与える影響力を考えても、株式を公開するべき段階に来ていると感じますね。

――元V6の井ノ原快彦がジャニーズアイランド新社長に就任しましたが、ジュリー氏から直接打診されたそうです。この話だけ聞くと、組織運営の透明化とは真逆の方向に行っている気もしますが……。

大関 関連会社の社長を、自分の言うことを聞く人に置き換えたように見えますよね。言うなれば、先代(ジャニー氏)の番頭さんだった滝沢氏が去ったので、自分のことをわかってくれる新しい番頭さんに井ノ原さんを指名したのでしょうが、それはあってしかるべきだと思います。

 ただやはり気になるのは、今回の人選に、自分の息がかかっていない第三者の意見を取り入れていたのかという点。一般的に、大きな会社だと、役員の人選は社長ではなく、社外取締役が委員の過半数を占める指名委員会が担います。もちろん社長の意見も聞きますが、そのうえで「本当にその人選は正しいのか」を吟味していくのです。しかし、そういった過程は経ていないでしょうね。

――井ノ原は今後、タレント業と社長業を両立していくそう。

大関 一般の会社の管理職にもいえることですが、プレーイングマネジャーって、うまくいかないんですよ。本人に、「プレーヤーとして頑張っていれば、マネジメントをさぼっていても、上から文句言われないでしょ」という逃げ道ができてしまうから。

 ジュリー氏がもし、「マネジメントに向いている」という理由で井ノ原さんを抜てきしたなら、「芸能活動からは足を洗いなさい」と言うべき。ただ、「自分が扱いやすい」とか、「人柄がいいのでジャニーズJr.たちが言うことを聞くだろう」という理由だけで選んだとすれば、のちのちうまくいかなくなると思います。

――一連の騒動を受け、ファンから「終わりの始まり」とまで言われるジャニーズ事務所ですが、今後の立て直しには問題が山積みですね。

大関 こうなったのは、すべては経営者の責任です。今後は、この経験をどう生かせるかにかかっています。ジュリー氏には何よりもまず「組織運営の透明化」に取り組んでほしいですね。

取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。

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