• 日. 12月 22nd, 2024

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『ザ・ノンフィクション』失踪や殴り合いのけんか……元受刑者支援の現実「あの日 妹を殺されて2 ~たとえ裏切られても~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月27日は「あの日 妹を殺されて2 ~たとえ裏切られても~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 新大阪駅の近くに本社があるカンサイ建装工業。社長の草刈健太郎は犯罪加害者を雇い入れる「職親プロジェクト」に7年関わっており、草刈自ら、面接のため全国の刑務所や少年院を訪ねている。ただ、雇い入れた元受刑者がすんなり更生できるケースはかなり少ないようで、失踪し連絡がつかなくなることや、再び罪を犯してしまうケースもあるようだ。

 それでも草刈が元受刑者の支援を続けるのには理由がある。2005年、草刈はアメリカで7歳下の妹・福子さんを犯罪で失う。福子さんを殺害した犯人は彼女の夫だった。そうした経験から、犯罪被害者を減らすには、まず加害者を減らすことが大事だと考え、草刈は加害者支援を続けている。

 20年10月、覚せい剤、大麻の使用により3年の刑期を終えたショウタを、草刈はカンサイ建装工業に雇い入れる。ショウタには妻子がいたが服役中に離婚。中学生の頃から家庭環境が荒れていたことが原因で薬物を始めたそうで、嫌なことがあるとクスリに逃げていたという。

 もともと、塗装職人だったショウタは、最初は真面目に働く様子を見せるが、徐々に寝坊したり、社員寮の寮長であるコウスケに金を借りるなど生活が乱れていく。寮の新年会では、離れて暮らす子どもが元妻の彼氏から虐待を受けていると明かし、草刈やコウスケに子どものためにもきちんと働くことを諭されるが、改善する気配はない。ショウタの部屋からは強い独特な匂いがすることもあるようで、香りの強いタバコであればいいのだが、何らかの薬物かもしれないとコウスケは案ずる。

 草刈は、ショウタの生活の乱れは薬物の影響もあるのではないかと「ダルク(薬物依存症患者の回復施設)」へ行くことを勧める。しかし、ショウタはダルクではなく自分の兄の元へ行くと話し、社員寮から失踪。それでも、草刈はショウタに電話をかけ、𠮟るのではなく電話には出てほしいと伝えた。

 元受刑者の雇い入れは、このような例にとどまらず、会社に大きな影響を及ぼすこともあるよう。

 タイチは母親が父親を殺害するという壮絶な過去を持ち、傷害や薬物使用で逮捕歴のある少年だったが、草刈の元で社会復帰を遂げ、かつて自分が収監されていた少年院で講演を行うまでになった。

 そんなタイチだが、同居する兄との仲は悪く、金の貸し借りがきっかけで殴り合いの兄弟げんかに発展。その場所が草刈の会社が受注した病院の「現場」だったため、カンサイ建装工業は発注元である病院から“出禁”を食らってしまう。草刈は「営業マン(が)頑張って7年もやって、やっと(仕事を)入れたのにな、(けんか)一発でなくなるてなあ。縁ないわ」と番組スタッフに苦しい胸の内を吐露。ただ、その後の病院への謝罪が受け入れられ、無事案件は継続できることになった。

 番組の最後では、ショウタと草刈、コウスケが約2年ぶりに再会。ショウタは職人として働くだけでなく、職人に仕事を回していく立場になるなど、しっかりと社会復帰を遂げていた。

 自社の経営という点から見れば、ショウタを雇ったことのメリットはなかったであろうが、2年ぶりに彼と再会した草刈は、道を踏み外さず社会復帰を遂げていることを、ただただ喜んでいた。それは、社会に加害者が増やさないという自身の信念が一つ、形になったことへの喜びだったのだろう。心底感心する。

 ただ、ショウタのケースは珍しいのかもしれない。失踪した後に連絡も取れなくなるのはよくあるようだ。なお、前回の放送では真面目に働く様子が伝えられていた元受刑者・スグルも、今回の放送内で触れられていなかった。「何事もなさすぎて放送するほどではなかった」のであればいいのだが。

 ちなみに、今回番組内で説明された再犯者率は49.1%(2021年版犯罪白書より)で、前回放送時に触れられていた、2019年度版犯罪白書の再犯者率48.8%よりも上昇してしまっている。

『ザ・ノンフィクション』「苦しさ」「興味本位」ではない薬物利用の動機

 番組中、衝撃的だった言葉があった。コウスケがダルクの見学に行った際、元薬物依存者がミーティングで話していたことだ。

「(薬物を)苦しくて使ったわけではないです、興味本位で使ったわけでもないです。ただ何となく使いました」

 つい想像しがちな「苦しくて(苦しさから逃げたくて)」「興味本位で」という理由ではなく、「ただ何となく」という、スマホを見るかのようなゆるい感覚で、薬物に手を出す人がいる。

 そしてこの発言をした人の、自身への洞察の深さにも驚く。よく言われがちな「苦しさ」や「興味本位」は、どうも自分にはピンとこなかったのだろう。安易な想像で、人をわかった気になってはいけないと背筋が伸びる言葉だった。

 次週は「美咲をさがして ~帰りを信じた家族の3年~」。2019年9月、山梨県・道志村にあるキャンプ場で、突然行方がわからなくなった小倉美咲さん(当時7)。必死で美咲さんを探す母親のとも子は、ネットで心無い中傷を受けることになり……。

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