どのような爆弾発言を投下するのかと注目を集めていたヘンリー王子とメーガン夫人のNetflixドキュメンタリー番組『ハリー&メーガン』の前半3話が、8日に配信にされた。
彼らが予告していた“2人のラブストーリー”だけでなく、英王室には植民地時代から変わらぬ“無意識の人種差別や偏見”があること、イギリスという国自体も人種問題を抱えていることなどを、奴隷制度の歴史に触れながら紹介。何も知らず王室に嫁いだメーガン夫人の戸惑いや心労、タブロイドのせいで父親との関係が悪化し絶縁したことを語るシーンもあり、ネット上では「相変わらず被害者ヅラしている」と厳しい批判が巻き起こっている。
今回のドキュメンタリーで、インスタグラムを介した出会いであることを告白したヘンリー王子夫妻。デート時に撮影したものや、王室離脱直後にヘンリー王子が空港で撮った自撮り動画をはじめ、バンクーバーの豪邸で不安そうな顔で王子を待つメーガン夫人のすっぴん姿、アメリカでのびのび育つ長男アーチーの様子など、写真や動画をたくさん公開しながら、プライベートを赤裸々に明かした。
中には、プロポーズをするためにひざまずく王子を夫人が撮影した映像まであることから、ネット上では「プライバシーを守るために王室離脱したくせに、1.5億ドル(約200億円)の契約金に目がくらんでNetflixにプライバシーを売った」といった批判が続出。ネガティブな声があまりにも多いため、王子夫妻の報道官は声明を発表し、「プライバシーを守るために王室を離脱するとは言っていない。それはメディアが作り上げたもの」だと反論。あらためて「真実とはまったく異なる物語を作り上げようとする」などとメディアを批判した。
しかし、ドキュメンタリーの予告編で、彼らを追いかけ回すパパラッチとして流れた映像が、実際は映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2』(2011年)のプレミアに集まったカメラマンたちであることが判明しているため、“捏造疑惑”も浮上。ネット上では「物語を自分に都合よく作っているのはお前たちだ!」「どこまで真実なのかわからない」という辛らつな意見も上がっている。
そんな今回のドキュメンタリーで特に問題視されているのは、メーガン夫人の「イギリスに行き、問題にされたから、私の人種についてみんな知ることになったの。それまでは、ほとんどの人が私を黒人女性として扱わなかったわ」という発言だろう。
この言葉に黒人女性たちが激怒しており、SNSには、「人種差別的なアメリカで生まれ、黒人のシングルマザーに育てられたのに? 信じられない。嘘をついている」「若い頃は黒人女性特有のカーリーヘアだったのに、ハリウッドではストレートに矯正している。白人特権を使うためにホワイトウォッシュしたのよね。計算高い人」などと厳しい声が噴出している。
また、メーガン夫人がエリザベス女王に初対面する際、「カーテシー」(片足を引いて軽く膝を曲げる、女性が位の高い者に対して行うヨーロッパの伝統的なあいさつの作法)をしなければならないと知ったことを振り返るシーンでは、両手を広げて深々と長々とお辞儀をし、大げさな作り笑いを浮かべながら頭を上げ「陛下、お目にかかれて光栄でございます」と挨拶する様子を再現。
ネット上では「女王を、王室の伝統をバカにしてる」「王族に対する人種差別」「不愉快」「無知な上に無礼で無神経でむしずが走る」と、これにも非難が相次ぐことに。「王子も気まずそうにしているし、この場面は編集でカットしたかっただろうね」と推測する声も上がった。
さらにメーガン夫人は、結婚式の数日前にタブロイドから金をもらっていたことがわかり、父親と絶縁状態になったこと、タブロイドには親しくもない異母姉が出てきて迷惑したことなどを悲しそうに回顧。ヘンリー王子は「父親を失ってしまった。私と一緒にならなければ、そんなことにはならなかったのに。責任を感じる」と発言した。一方で、メディアの取材を受けた父方の家族は「父親はいる。彼女が連絡を取らないだけだ。心臓発作を起こしても、心配せず、連絡してこないんだ」と反論している。
なお、ドキュメンタリーの冒頭に「王室のメンバーは番組の内容に対するコメントを拒否した」という字幕が表示されるのだが、米娯楽雑誌「People」によると、実際にはコメントを求められていなかったとのこと。Netflix関係者は「チャールズ国王とウィリアム皇太子の報道官に連絡を入れ、コメントする権利を与えた」と主張しており、双方の言い分は食い違っている状態だ。
さらに、昨年「取材方法に問題があった」との調査報告が公表され、ウィリアム皇太子が「もう二度と放映されるべきではない」と訴えた、BBCのドキュメンタリー番組『パノラマ』(1995年放送)でのダイアナ元妃のインタビューの映像も2回にわたり流れた。Netflixが映像を使用する許可を取ったのかどうか問題視するメディアもあり、ネット上では、「ヘンリー王子が止めればよかったのに」との声が噴出するなど、王子に対する批判も集まっている。
ヘンリー王子は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)になぞらえ、メ―ガン夫人の名前をもじって作られた造語「メグジット」(王室離脱)は女性蔑視であると主張したり、イギリスの植民地時代からはびこる人種差別を嘆いたが、「だったらもう戻ってこなくていいよ」と感じているイギリス人は多いようで、ネット上では、「称号だけでなく国籍も剥奪したらいい」と厳しい声も。
イギリスのメディアの多くはこのドキュメンタリーに批判的だが、アメリカの大手映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」でも、低評価が相次いでいる。映画評論家は100%中50%とまずまずの評価だったが、視聴者は12%とかなりの低評価をつけ(12月13日現在)、「オプラ(ウィンフリー)によるインタビューのロングバージョン」「目新しいものは何もない、ごみみたいな内容」「Netflixを解約する、いいきっかけをくれた」などと辛らつなコメントが並んでいる。
昨年3月にアメリカのCBSテレビで放送されたオプラ・ウィンフリーの独占インタビューで、王室から「人種差別的発言があった」ことを暴露したヘンリー王子夫妻。当時、別件で取材を受けていたミシェル・オバマ元大統領夫人は、このインタビューについて意見を求められ、「人種差別問題は今に始まった問題ではないから、彼女が感じたことについては特に驚かない。家族が許し合い、和解し合えることを祈るばかり。これは家族の問題であって、家族とは何よりも大切なものですから。これを機に、良い教訓として我々に示してほしい」とコメントしていた。
ネット上では、「ミシェルのアドバイス通り、インタビューにとどめていたら、ヘンリー王子夫妻の印象は良くなっていたはず」「英国批判を封印し、メンタルヘルスや退役軍人のためのチャリティ活動に精を出していたら、アメリカのロイヤルになれたかもしれないのに」と残念がる声も上がっている。
なお、物議を醸している『ハリー&メーガン』の後半4~6話は、15日に配信される予定だ。