「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係には、さまざまな暗黙のルールがあるらしい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、暗黙ルールを考察する。
コロナ禍の影響で、ママ友同士が直接集う機会が減った分、LINEでのやりとりが活発になったという人は多いだろう。気軽にメッセージを送り合えるツールだけに、ついついママ友と長時間“ラリー”が続いてしまうというのもよく聞く話だが、そういった状況を苦痛に感じている人もいるのかもしれない。今回は、ママ友同士のLINEのやりとりをめぐる、あるお母さんの葛藤を取り上げる。
双子育児と仕事で余裕なし! ママ友のグループLINEがストレス
パソコンメーカーのコールセンターで受信業務を担当しているまりかさん(仮名・37歳)は、小学3年生になる双子男児のママ。夫の実家は商店街で蕎麦屋を営んでいるという。
「夫は5年前に先代から店を継ぎました。コロナ禍になって、客足が遠のいたので、店の手伝いを週6から土日のみにして、去年からコールセンターでのパートを始めたんです」
パートと店の手伝いで自分の時間がまったくないというまりかさん。しかし、保育園時代のママ友たちは、よくグループLINEでメッセージのやりとりをしているそうだ。
「ママ友は、定時で終わる派遣の仕事や、ほぼリモートワークという働き方なので、メッセージをゆっくり見たり、送ったりする余裕があるんですよね。私は、仕事中スマホはロッカーに預けなければならないし、店でも見る暇がないので、メッセージの返信を数日放置してしまうこともよくあるんです」
まりかさんが参加しているLINEグループはいくつかあるが、保育園時代に仲が良かったママ友4人のグループでは、日常の出来事やハマッているテレビドラマについてなど、たわいもない会話をしているという。しかし、年末の慌ただしさにより、まりかさんが返信をおろそかにしていたところ、あるママ友から連絡が来たそうだ。
「その時、LINEグループは、年末年始の過ごし方の話題で盛り上がっていました。スマホの画面を開くと、通知が20件も来ていて驚きましたが、明日返そうと思っていたんです……。そうしたら、グループチャットにいるママ友Aさんから、ダイレクトにLINEが届いて『最近、返信がないけどどうしたの?』と心配されてしまって……」
まりかさんは、仕事と育児が忙しかったために返信がおろそかになっていると伝えた。すると、思いもよらない返信がきたという。
「『4人のグループなのに、3人しか会話してないのが気になっちゃって』っていうんです。私からのレスの遅さをやんわりと注意されたんだなぁと思って、落ち込みました……でも別に重要な内容ではないし、私は普段からスマホを使い慣れていないのもあって文面を打つのも遅く、ストレスを感じるんです」
また、まりかさんは、「Aさんからのメッセージは、まるで日記というか。その日にあったことや、出かけた報告ばかりで、どんなリアクションをこちらに求めているのかわからない」と困惑した表情を見せる。
「Aさんは、家族でディズニーランドに行ったという報告や、子どもが参加するサッカーの試合風景の写真を送ってくるんです。別にマウントのつもりはないと思うのですが、『いいなぁ』とか『すごいね』とか返したらいいんですかね? 時々、反応に困るんですよ……でも、息子同士の仲が良いので返信しないわけにはいかず、地味にストレスになっています」
Aさんからよく「休みの日は何するの?」と聞かれるのも面倒だというまりかさん。
「うちは店があるので、土日は休めない。しかも双子なので移動も大変。旅行なんてもってのほかで、全然行っていません。でもそれを伝えると『子どもが小さいうちに出かけないなんてかわいそう』みたいな反応をされるので、伝えづらいんですよね」
ただ、まりかさんは、Aさんからのメッセージが嫌なわけではないという。
「送ってくるだけなら、時間がある時に見ればいいので、いいんですよ。なにかしらのレスを、すぐに送らなきゃいけないのが“無理”なんです……。でもLINEグループのママたちは、Aさんのメッセージにすぐさま反応して、『〇〇君、かっこいいね』みたいに返す。私よりは余裕があるかもしれないけど、みんなも働いていて忙しいワーママなのにすごいなぁって。でも、やっぱりこちらが忙しくていっぱいいっぱいなことをわかってほしいです」
まりかさんは、「私はママ友のレスが来なくたって、『ああ忙しいんだな』と思うくらいで、まったく気にならないです」ときっぱり言う。
「特にワーママ同士の付き合いでは、LINEのレスがおろそかになるのは気にしない。これって暗黙のルールだと思ってたんですけどね……」
もはやママ友付き合いに欠かせないアイテムといえるLINE。しかし、そのやりとりは、相手の状況がわからないだけに気を使うものだ。ワーママ同士の付き合いでは、朝や夕食時などの忙しい時間帯、仕事中と思われる日中には、メッセージを送るのを避けたほうがよいといった暗黙のルール……というか、マナーも存在していると思う。
一方、レスの有無に関しては、「なくても気にならない」派と「必ずほしい」派と分かれるのではないだろうか。特に今はコロナ禍で、ママ友同士が学校行事や送迎時などで顔を合わせる機会が減っている。その分、メッセージでのつながりを重要視しているママも存在するかもしれない。
まりかさんは、ママ友同士のやりとりは、仕事より優先度が低いという口ぶりで、それは確かにその通りだと思うが、「レスが遅い、レスがないのもお互い様」との認識は、やや一方的な印象を受けた。
相手からのレスが遅い、レスがないことで、「もしかして嫌われてしまったのではないか?」「病気などになっているのではないか?」と不安になってしまうママもいるだろうし、スタンプだけでもいいので、やはり何らかの対応はすべきだろうと思う。
まりかさんが、家の手伝いやコールセンターの仕事で、どれほど忙しい日々を送っているかは、おそらくママ友たちに伝わっていない。また、もともとレスがマメなタイプではないことも知られていないのではないか。であれば、前もって「仕事中はスマホを見られないから、確認するのは夜になる」ことや、「あまりマメじゃないので、日程を決めるような重要事項以外は、あまり返信できないけど気にしないで」というふうに伝えておくのがいいのではないだろうか。
ここで重要なのは、レスの遅さに関しては、人によってどれくらいで「遅い」と感じるかが異なるだけに、具体的に「この時間帯以外は、スマホを見ていない」と伝えることだと思う。
ママ友は年代も職業も違うので、“常識”が異なり、不本意な行き違いが起きやすい。誤解を生まないためにも、まずは自分の“常識”を相手に伝える。そのうえで、「ワーママは忙しいので、LINEの返信を強要しない」が、暗黙のルールではないだろうか。