• 日. 12月 22nd, 2024

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SixTONES「肥」はなぜ炎上したの? ジェンダー学の専門家に聞く“ジャニーズとルッキズム”

ジェンダーや人権をテーマに取材をするライター・雪代すみれさんが、アイドルに関する“モヤモヤ”を専門家にぶつける連載「アイドルオタクのモヤモヤ」。今回のテーマは、「SixTONESのプロモーションはどうして炎上したの?」です。

 今年1月、SixTONESの3rdアルバム『声』の発売に伴い、公式インスタグラムのストーリーズ(24時間限定公開)に、ジャケット写真の加工画像が投稿された。そこには、ふくよかな体形に加工されたメンバーたちの姿があり、アルバムタイトルも「肥」になっていた――。

 この“ネタ”に対して、ネット上では、「ボディシェイミング(外見・容姿への侮辱や揶揄)だ」「今の時代に体形揶揄なんて信じられない」といった批判が集まる一方、「センスある」「私は太ってるけど笑えた」など擁護の声もあり賛否両論に。また、「どうして批判されているのかわからない」といった疑問も散見された。そこで今回、「肥」の加工画像は何が問題だったのか、ジェンダー学に詳しい東京大学大学院情報学環の田中東子教授に話を聞いた。

SixTONESの炎上から考える、日本社会では「太っている人」をどう扱ってきたか

——SixTONESメンバーが太った状態に加工された写真を、笑いの“ネタ”としてSNSにアップすることは、どこが問題なのでしょうか。

田中東子教授(以下、田中) 太っていることをいじったり揶揄したりするのは、日本に限らず、海外でもバラエティ番組や日常会話の中で行われてきたことです。ただ最近では、理想とされてきた外見に合わない特徴を笑いの対象にすることは、他者に対する態度としていかがなものかと見直され、人権の視点からも問題視されています。

 「ルッキズム(容姿差別)」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。太っていることに限らず、容姿イジり自体に違和感を覚える人も増えてきていると感じます。

 ルッキズムの観点を知らない人からすれば「今までも笑ってきたのに、なぜSixTONESのときだけ批判されるの?」という感覚かもしれませんが、この問題に関心がある人からすれば、いまだに太っていることを揶揄するようなプロモーションが行われたことにショックを受けたのでしょう。

——「変顔と何が違うの?」「太ってることではなくて、加工してるのが面白いだけなのに」「声と肥をかけているだけ」などの意見もありましたが……。

田中 SixTONES側も、真正面から太ってる人をバカにする意図はなかったと思います。ただ、これまで日本社会の中で太っている人をどう扱ってきたかを振り返ると、「見た目が美しくない」と貶めたり、からかいの対象にしてきました。

 「ハゲ」「低身長」のように、男性が対象とされやすいルッキズムの問題もありますが、体重・体形に関しては女性に対してより厳しい視線が向けられています。最近は聞かなくなってきましたが、少し前は「50kg超えたら女性として見られない」といったことを言う人もいましたよね。ジャニーズは女性ファンが多いので、ファンの中にも今回の件で嫌な気持ちになった人もいると思います。

 また、画像を加工することには「ギャップを楽しむ」という意味が含まれていると思うのですが、彼らを太らせる加工は、実際には細くてすらっとした体形であるから成立することです。アイドルたちは、世間から「かっこいい」「綺麗」であることを求められ、日々努力をしており、確かにその点を褒められることが多い一方、ネット上では相変わらず外見を侮辱するような投稿を見かけることがあります。実際、彼らは体形が変わったことで、何かしらの“ジャッジ”をされることもあるでしょう。それなのに、あえて太っている加工をすることのグロテスクさも感じられました。

——問題があることはわかっても「SixTONESが批判されているのを見るのがしんどい」というファンもいると思います。

田中 私にも推しがいるので、ファンが「推しは悪くない!」と思いたい気持ちはわかります。でも今回の件については、SixTONESメンバーの言動が問題なわけではないですよね。

 批判している人も、多くはSixTONESのメンバーではなく、プロデュースの環境や裏方として携わっているスタッフの人権感覚、ジャニーズ事務所のチェック体制、そして日本社会における人権教育の遅れを批判しているのだと思います。

——ファンからの批判によって、ジェンダー観や人権感覚が改善されたアイドルもいますよね。例えば、女性蔑視的な歌詞の曲があったBTSは、ファンから批判されたことで、ミソジニー(女性嫌悪)から脱却するきっかけになったことは有名です。日本のアイドルも、BTSのようにアップデートすることは期待できますか。

田中 期待はしています。2010年頃までは男性グループというとジャニーズ事務所一強でしたが、最近はK-POPの影響を受けたグループなど、多彩なボーイズグループが活動しています。ファンの指摘を受け取って、それに応答しながら成長するグループが出てくることを期待したいです。

——今回はSixTONESでしたが、ジェンダーやルッキズムに関する発言で批判された経験のあるジャニーズは数知れず。もしかしたら、自分の推しが炎上する可能性もあります。そんな中で“推し活”をする人々へメッセージをお願いします。

田中 エンターテインメントはグローバル化しています。グローバルスタンダードなジェンダー観や人権感覚に照らし合わせて、ファンが推しを育てるという意識も大事になってくると思います。

 もし推しが炎上したとしても、推しの存在や人格が攻撃されているわけではなく、対象となる言動が批判されているだけ。批判している人も、「その行為をやめてほしい」とか「なぜ問題なのか知ってほしい」という願いを込めて声を上げているんです。なので、批評することと推しを愛することは両立すると覚えておいてください。

 あと、これは実体験からのアドバイスになりますが、推しが1人だけの場合、何かショックな出来事があったときにダメージが大きすぎるので、「推しは複数持とう」とも言いたいですね(笑)。

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