7月2日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、テーマは「花子と大助 ~1450日ぶりのセンターマイク~」。
『ザ・ノンフィクション』あらすじ
2018年3月、マラソンイベント中に倒れたお笑いコンビ、宮川大助・花子の宮川花子は、血液のがんの一種「症候性多発性骨髄腫」と診断される。すでに体のあちこちにがんが転移している状況で、余命半年を告げられた。そこから数カ月、花子の体は一回り小さくなり、抗がん剤の副作用を恐れ化学療法の導入が遅れたことで、寝返りを打てなくなるほど衰弱が進んでしまう。リハビリの際、前後を介護士に支えられ、ようやく立ち上がる様子が伝えられていた。
なお、花子の闘病の日々は過去3回、同番組で放送されており、前回のオンエア(22年)では、懸命のリハビリもあり20年4月に花子は退院。奈良県生駒市の自宅で、車いす生活を過ごす中、なんばグランド花月(以下NGK)のセンターマイク(舞台中央に置かれたマイク)への復帰の夢を口にする。時は流れ、21年12月には、花子はトイレもお風呂も1人で入れるようになり、2年半ぶりに地元・生駒市のトークショーで舞台復帰を果たした。
がん発覚から4年が経過した22年3月、花子のガンは寛解状態(「完治」とは異なるが、病気による症状や検査異常が消失した状態)まで回復。翌月4月には、大助・花子として、吉本興業110周年特別公演舞台に出演する。
順調そうに見えた花子の経過だったが、今回の放送では、22年10月29日、自宅で息苦しさを訴え、救急車で搬送される様子が伝えられた。花子は心肺停止一歩手前の「心不全」で、肺には大量の水が溜まり、溺れているような状態だったという。その後、一からやり直しになったリハビリを根気よく続け退院し、23年の正月を自宅で迎えることができた。初日の出を前に、花子は「5年生存率いったで」と発言。一方で、一進一退を繰り返す病状に「もう治ってるもんや思ったのにな。“治らん病気”って聞いたけど、そうなったらうまく付き合っていかなあかんな」とも話す。
22年に、NGKで行われた舞台には出演を果たしたものの、漫才師として、NGKでのセンターマイク復帰を願う大助・花子。23年5月1日、その前哨戦として、NGKの地下にあるYES THEATERで『宮川大助・花子の「おまたせ!」』を開催し、夫婦漫才を披露することに。記者会見で花子は、体調を崩しがちな自分をイベントに起用した吉本に対し、感謝の思いを伝えていた。
YES THEATERの舞台袖の手前には、8段の階段があるのだが、花子は車いすから降り、ゆっくりと時間をかけ、這いつくばりながら登っていた。その後の舞台では、花子が車いす、大助が椅子に座った状態で漫才を披露。花子はいつもの調子で闘病をネタにし、会場を大きく沸かせていた。
しかし、2人は漫才師として、漫才を“立って行うこと”に強いこだわりがあった様子。大助は座った状態の漫才に違和感がないか、終演後の会見で周囲に尋ねていたが、「あんだけしゃべったら誰も違和感ない」と記者である男性が答えていた。
そこから日を置かず、5月9日には、いよいよ大助・花子のNGKへの漫才師としての復帰が決定する。前日、病院に赴き体調に関して医師のお墨付きをもらいたかった花子だが、医師からは張り切りたくなる気持ちもわかるが、しんどくなったらすぐ休憩を取るよう勧められる。
当日、NGKに向かう車中で花子は不安を吐露するも、大助は「それを口に出して言われると(こちらも)ものすごくつらいから、(花子の)頭の中に置いといてって言うてんの」と取り合わない。花子は「どんだけ怖い思うてる?」と返し、車中の雰囲気はぎくしゃくしてしまう。
しかし舞台が始まるといつもの調子で2人は会場を沸かせ、帰宅後すぐにその日の漫才の動画を見て、反省会をしていたのだった。
『ザ・ノンフィクション』朴訥とした大助の、燃えたぎる執念
大助は公私ともにあの朴訥な雰囲気で花子をかいがいしく見舞い続け、とても優しい人物だと感じた。しかし一方で、5月の復帰公演当日、NGKに向かう車中で、“大勢の観客が見ている中で体調が悪化したら”と不安がる花子の気持ちには、寄り添おうとしないどころか突き放している。そういえば大助は、娘が生まれ、芸の道は過去のものとしていた花子を再度芸人として引きずり出した人でもあった。大助は優しい夫だが、芸人でありたい、舞台に立ちたい、という執念はそれ以上に強い。
しかし、そんな大助の執念あっての大助・花子の華々しいキャリアなのだろう。大助・花子は、マシンガントークをかます花子の才能につい目がいきがちだが、妻が病に倒れてもなお、大助が“芸人でありたい”という燃えたぎる執念を抱き続けたことも、すさまじい才能だと思えた。
次回は「就職先はさる軍団2 ~汗と涙の新入社員物語~ 前編」。伝統芸能「猿回し」を行う日光さる軍団も、働き方改革が進み、今や週休2日のシフト制だという。生き物の命を扱うこと、伝統芸と今の働き方との兼ね合い……さまざまな事情の中で奮闘する新人たちを見つめる。