サイゾーウーマン編集部員が週替わりで近況をつづっていく「編集部コラム」。半径1メートルの身近な話からジャニーズや芸能ニュースのネタまで縦横無尽に話題が飛び出します!
こんばんは、サイゾーウーマン編集部のJ子です。10月2日に行われた、ジャニー喜多川氏(2019年に死去)の性加害問題についてのジャニーズ事務所の記者会見に、前回に引き続き行ってきました。
会見中、質問権を与えられず声を荒げた一部の記者を、井ノ原快彦副社長が「落ち着きましょう」「子どもたちも見ています」となだめた件には、ネット上で「トーンポリシング」「創業者が子どもに性加害をしていたジャニーズ側が何を言っているの?」といった猛烈な批判が噴出。また、その後に起こった記者席からの拍手も「どういうつもりなのか」と物議を醸しました。さらにその後、会場で指名しないようにする記者をまとめた「NGリスト」まで流出し、もう地獄のような展開が続いています。
私は当日、スチール席で写真撮影をしていたのですが、井ノ原の「子どもたち」発言とあの拍手には、あまりの白々しさに驚き、「NGリスト」については、かねてから徹底した情報統制を行ってきたジャニーズ“らしさ”を感じ脱力しました。しかし、それ以上にモヤモヤしたのが、藤島ジュリー景子前社長のお手紙だったんです。
それは、ジャニーズ事務所名誉会長を務めた母・メリー喜多川氏と自身の確執についてつづられたもので、「私が従順な時はとても優しいのですが、私が少しでも彼女と違う意見を言うと気が狂ったように怒り、叩き潰すようなことを平気でする人でした」など、端的に言うと、メリー氏がいかに“毒母”だったかという内容でした。
正直私は前回の会見で、ジュリー氏が「普通の母子関係とまったく違いまして。私とメリーと、ざっくばらんに話したことはございません」と話した際は、かなりショックを受けましたし、彼女の苦労は計り知れないものがあると思ってしまったのですが、この手紙によって、ジャニー氏の性加害問題が、ジュリー氏の悲劇という物語に乗っ取られていくような……そんな不穏さを感じました。
振り返れば、東山が前回の会見で、「夢を握りつぶされた被害者と、夢をあきらめた僕」と言ったのも気になるんです。現役を引退するつもりがなかったのに、社長業に専念せざるを得なくなった東山には同情しますが、これは彼の悲劇の物語を、性被害者の苦しみと並べる行為であり、それは絶対にしちゃダメでしょと思ってしまいます。
『ジャニーズ伝説』に感動、性虐待を告発したメンバーがいたのに……
物語の美しさに見惚れ、重大なものを見落とすことへの恐怖を感じるのには理由があります。
私はA.B.C-Zのファンでして、ジャニー氏と初代ジャニーズの軌跡を描いた彼らの主演舞台『ジャニーズ伝説』をかなりの回数見ているんです。初代ジャニーズといえば、のちにジャニー氏の性虐待を告発した『ジャニーズの逆襲』(データハウス)の著者・中谷良氏がいたグループ。彼は同書で、11歳の時に初めてジャニー氏から性加害を受けたことを明かしています。
私は中谷氏の告発本の存在は昔から知っていたにもかかわらず(サイゾーウーマンで記事も出ています)、『ジャニーズ伝説』で描かれる、若かりし頃のジャニー氏と初代ジャニーズの“青春物語”があまりに美しく、何度も劇場に足を運びました。
ジャニー氏の少年野球チームの選手だった彼らが、映画『ウエストサイド物語』に魅了され、歌とダンスに目覚め、芸能界に。日本で人気を博し、エンターテインメントの本場・アメリカで武者修行を行い、全米デビューの成功をつかみかけるも、帰国せざるを得なくなり、結果グループは解散を選ぶ……というのが同舞台のおおまかなあらすじです。特に18年版の第1幕ラストは、ジャニー氏と初代ジャニーズの在りし日の練習風景を回想するシーンで、私はもう席から立ち上がれなくなるほど感動し、号泣。「ジャニーさん、ジャニーズを作ってくれてありがとう」とまで思っていました。
繰り返しますが、ジャニー氏が未成年である中谷氏に性虐待をしていたことを知っているにもかかわらず、彼の作った物語でこんなにも感動していたわけです。そのことを思うと、会見の場で、ジュリー氏や東山が自身の悲劇を物語ることに、恐怖を抱いてしまいます。
「うわさとしては聞いていた」としか言えない、東山紀之の感覚がわかる
東山は前回の会見で、性加害について「うわさとしては聞いていた」と話し、今回記者から「社会的には通用しない」と糾弾されていましたが、私はそうとしか言えない東山の感覚がわかるとともに、そこにこの問題の恐ろしさがあるように感じます。
ジュリー氏は手紙の中で、ジャニー氏について「天才的で魅力的であり、みなが洗脳されていたのかもしれません」と述べており、ジャニーズファンである私も彼に「洗脳」されていたのでしょうが、それとは別に、性暴力に関する――特に男性の性被害に対する関心のなさが、この問題が長年見過ごされてきた最大の理由のように思うんです。
他方で、そもそもジャニーズからの圧力(もしくはジャニーズへの忖度)により、大手メディアがこの問題を報じてこなかったのがよくないと見る向きもありますが、サイゾーウーマンも含め、同社と利害関係のないマスコミもいたわけです。この問題が表面化して以降に、ジャニーズを糾弾している記者にも、「『うわさとしては聞いていた』は社会的には通用しない」という批判が投げかけられているのは間違いありません。
井ノ原は会見で、記者から「ジャニー喜多川さんは50年以上にわたって悪質な性加害を繰り返した。国連の人権理事会も動いて国際問題化している中で、従来通り未成年の少年を預かって育成するというのは理解できない」「従来通り育成したいのであれば井ノ原さん、副社長としてジャニーさんの性加害を容認しているように映る」と言われ、「え、そうですか? マジですか?」と軽い口調で驚き、東山が「井ノ原の人間性から考えると、向かい合ってくれる大人がいるというのは大変いいことだと思っている」とフォローしていました。
井ノ原が少年に対し、性加害をすることはないでしょう。しかし、人間性うんぬんではなく、ジャニーズ事務所で性暴力が発生し、それが長年見過ごされてきた“構造”にこそ目を向けるべきで、それを理解していないことには、何かまた別の問題が起こる気もしてしまいます。
井ノ原は、ジャニー氏の時代とは違い、1人ではなくたくさんの大人で子どもたちを見守っていくと宣言していましたが、性暴力が生まれ、問題視されない構造について、ジャニーズ内はもとよりマスコミの間で、もっと議論されるべきと感じた会見でした。