覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける瑠壬(るみ)さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
年末に近づくと、ムショや拘置所に入る人が増加
今年も、もうあと2カ月ですね。広告は来年の年賀状やおせち料理やカレンダーばっかりで、ほんまに1年あっちゅう間です。
結構前からですが、この時期になると、「ホームレスになるより懲役(受刑者)になって年を越そう」と思う人が出てきます。数えたわけではないですが、瑠壬が務めてた頃も年末年始はムショや拘置所で過ごす人の数は、体感的に多かった気がします。
特に最近は、物価は上がるし、人手不足やのに高齢者は雇ってもらえませんから、行き場のないお年寄りが事件を起こして拘置所やムショで年越し、あるいは余生を送るみたいな感じになるらしいです。
ゆうてもお年寄りですから、こないだの「86歳・元ヤクザ氏」の「拳銃立てこもり事件」みたいな元気な話はまずなくて、だいたいが「無銭飲食」か「万引」ですね。
ホームレスになったり、無銭飲食や万引きをするのは、年齢とか関係ないですが、なんかお年寄りが多い印象があります。 せっかく長生きしても寂しいことです。
どっちみち、お店は大迷惑です。まず弁償は期待できないし、警察の取り調べに時間を取られますから、何もええことはありません。
刑務所にはドライヤーもない
前から書いてますが、「シャバはツライからムショに行こう」は、オススメできません。たしかに三食出ますし、寝るところもあって、お正月にはおせち料理も出ます。
でもお風呂は真夏でも1日置きやし、どんなに寒くても水道の蛇口からは水しか出ません。朝は、超冷たい水で顔を洗うのです。ドライヤーもないので、入浴後は髪をちゃんと乾かせなくてマジ凍ります。
最近は建て替えも進んでますから、北海道のムショとかはもしかしてお湯が出るかもしれませんが、聞いたことないですね。ドライヤーはないと思いますし。
もちろん食べたいものも食べられへんし、本とか差し入れも制限あって、「自由」はほぼありません。
それに、ムショに来てくれるようなお医者さんはもともと少ないのに、どんどん減ってますから、もし病気になったらアウトです。
もうほんまに天涯孤独で、お墓にも入れないような身の上で、自由のない不便な生活に耐えられるのなら、まあまあ過ごせます。自分に興味がなくなる「セルフネグレクト」みたいな人は、刑務官の命令通り動くほうがラクなんですね。瑠壬みたいに「もっとビジネスで成功したい!」「もっときれいになりたい!」「もっとぜい沢がしたい!」とか思てる人には務まらないのです。って、その割に長く行ってましたが。
今の刑務所はヤクザよりも万引常習犯のほうが増加
今どきのムショは、ヤクザよりも万引常習犯のおばあさんのほうが増えてるらしく、法務省も介護にはわりと取り組んでますね。刑務官が認知症の介護を勉強してるそうです。
瑠壬もムショでは、お年寄りのお世話をさせてもらいましたよ。これは「エリート」の仕事です。ケガとかさせたら一大事ですからね。
法務省がマジメにやってるのも、施設でお年寄りが亡くなったら大騒ぎになるからで、別にお年寄りを大事に思ってるわけとちがいます。とにかくなんでも「事なかれ主義」。「事件や事故を起こさないこと」が所長以下全員のミッションなんです。
確かに現場には、優しい担当さんもいて、親身にお世話をしてくれる人もいてます。これはええことですが、優しくされるから、お年寄りはまたムショに戻ってきます。シャバに居場所ないから。
ありがちな手口は、ムショを出てそのままタクシーに乗り、3万円くらい乗ったところで「お金がないです」と言って、そのまま警察へ直行されるやつですね。これも運転手さんは大迷惑です。
居場所のない人たちが気兼ねなく住める寮みたいの、あればいいんですかね。瑠壬も考えましょうかね。