現在オンエア中の10月期・秋ドラマを含め、2023年の民放ゴールデン・プライム帯(テレビ東京系を除く)の連続ドラマは全56作。それらの初回世帯平均視聴率をランキング化し、今回はワースト10の作品と傾向を考察する。
2023年連続ドラマ「初回視聴率」ランキングワースト10
※対象はテレビ東京を除く民放4局のゴールデンプライム帯(午後8~10時台)ドラマ
※ビデオリサーチ調べ、関東地区
※小数点第2位以下は四捨五入
ワースト1位:『たとえあなたを忘れても』(テレビ朝日系、日曜午後10時)3.6%
主演:堀田真由
ワースト2位:『スタンドUPスタート』(フジテレビ系、水曜午後10時)4.1%
主演:竜星涼
ワースト3位:『何曜日に生まれたの』(テレビ朝日系、日曜午後10時)4.2%
主演:飯豊まりえ
ワースト4位:『だが、情熱はある』(日本テレビ系、日曜午後10時30分)4.7%
主演:King&Prince・高橋海人、SixTONES・森本慎太郎
ワースト6位(同率):『この素晴らしき世界』(フジテレビ系、木曜午後10時)5.4%
主演:若村麻由美
ワースト6位(同率):『転職の魔王様』(フジテレビ系、月曜午後10時)5.4%
主演:成田凌
ワースト7位:『フェルマーの料理』(TBS系、金曜午後10時)5.5%
主演:高橋文哉、志尊淳
ワースト8位:『日曜の夜ぐらいは…』(テレビ朝日系、日曜午後10時)5.6%
主演:清野菜名
ワースト10位(同率):『マイ・セカンド・アオハル』(TBS系、火曜午後10時)5.7%
主演:広瀬アリス
ワースト10位(同率):『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系、日曜午後10時30分)5.7%
主演:安藤サクラ
安藤サクラ主演『ブラッシュアップライフ』は低視聴率も「今年イチの名作」?
ワースト10位は、1月期の日本テレビ系「日曜ドラマ」枠で安藤サクラが主演を務めた『ブラッシュアップライフ』。初回は5.7%。同作はバカリズムが脚本を担当し、主人公の近藤麻美(安藤)と同級生・門倉夏希(夏帆)、米川美穂(木南晴夏)が織りなす“タイムリープ系ヒューマンストーリー”だ。視聴率は1ケタ台を推移するばかりだったが、視聴者の間では大反響を呼び、今年イチの名作と評価する人も多い。たとえ視聴率が低くても、ヒット作になれるということを証明したドラマともいえるだろう。
同率5.7%で発進し、同ランキングのワースト10位に並んだのは、現在TBS系「火曜ドラマ」枠で放送中の『マイ・セカンド・アオハル』(主演・広瀬アリス)。問題を抱えた社会人女性が一念発起して大学生になり、“年下の先輩”たちと恋に、勉強に、夢に奮闘するラブコメディ。恋のお相手となる小笠原拓役にはなにわ男子・道枝駿佑が起用され、若年層をターゲットにしているとみられるが、11月14日放送の第5話は4.6%を記録。また、沢島真凛役の飯沼愛が撮影中の事故でケガをしたことも報じられ、ファンは心配していたが、同14日には仕事復帰が報告された。
ワースト8位は、テレビ朝日系で日曜午後10時に新設されたドラマ枠にて清野菜名が主演した『日曜の夜ぐらいは…』(4月30日~7月2日まで放送)。初回は5.6%だった。主人公は、ファミリーレストランでアルバイトをしながら、車椅子の母親と生活する“ヤングケアラー”の岸田サチ(清野)。設定だけ聞くと内容が重そうであること、また新設ゆえに、この枠自体に視聴者がついていなかったことも敗因だったかもしれない。
ワースト7位は、高橋文哉と志尊淳がTBS系「金曜ドラマ」枠でダブル主演中の10月期ドラマ『フェルマーの料理』。漫画家・小林有吾氏が「月刊少年マガジン」(講談社)にて不定期連載している同題作品の実写化で、かつて数学者を目指していた北田岳(高橋)が、シェフ・朝倉海(志尊)のレストランで見習い料理人となり、数学的思考で料理という難題に挑戦していくストーリー。高校時代に調理師免許を取得していた高橋が、同ドラマで本格的な料理姿を初披露するということでファンは喜んでいたが、初回5.5%発進、11月10日放送の第4話も5.4%と低空飛行を続けている。
ワースト6位は、7月期のフジテレビ系「月10」枠にて放送された『転職の魔王様』(主演・成田凌)で、初回5.4%を記録。小説家・額賀澪氏の同題作品シリーズ(PHP研究所)が原作で、主人公は冷徹な対応から「転職の魔王様」の異名を持つキャリアアドバイザー・来栖嵐(成田)。小芝風花や前田公輝、白洲迅、おいでやすこが・おいでやす小田、山口紗弥加、石田ゆり子ら、バラエティ豊かな俳優陣も出演していたが、全話を通しての平均も5.0%と不発に終わった。
同じく初回5.4%でワースト6位となったのは、フジテレビ系「木曜劇場」枠で若村麻由美が主演した7月期ドラマ『この素晴らしき世界』。若村は平凡な主婦・浜岡妙子と大女優・若菜絹代の2役を担当。声も顔も絹代に瓜二つの妙子が“替え玉”を演じることになるというストーリーだった。当初主演する予定だった鈴木京香が体調不良により降板したため、若村が抜てきされたという経緯もニュースになったが、主演交代の影響で話数が削減。このように制作自体がドタバタだったせいもあってか、全話平均3.9%と大コケした。
朝ドラ俳優・竜星涼主演の『スタンドUPスタート』は苦戦
ワースト4位は、日本テレビ系「日曜ドラマ」枠にて『ブラッシュアップライフ』の次に始まった4月期ドラマ『だが、情熱はある』で、初回は4.7%。King&Prince・高橋海人とSixTONES・森本慎太郎がダブル主演し、高橋がオードリー・若林正恭役を、森本が南海キャンディーズ・山里亮太役を務めることで放送前から話題に。局も必死に盛り上げていた印象だが、一時期は3%台を推移し、全話平均は4.1%となった。しかし、作品自体の評価は高く、SNSでは毎回実況が大盛り上がり。また高橋による若林、森本による山里の演技が、本人たちを忠実に再現していると、視聴者の度肝を抜いた。
ワースト3位は、飯豊まりえ主演の『何曜日に生まれたの』(テレビ朝日系、8月6日~10月8日まで放送)で、初回4.2%。『日曜の夜ぐらいは…』と同じ枠で放送され、『101回目のプロポーズ』や『ひとつ屋根の下』(ともにフジテレビ系)シリーズなどを手がけたヒットメーカー・野島伸司氏による脚本だったが、主人公はオートバイ事故がきっかけで引きこもりになった黒目すい(飯豊)とまたもやヘビーな設定で、全話平均は3.3%だった。
ワースト2位は、1月期のフジテレビ系「水10」枠で竜星涼が主演した『スタンドUPスタート』。原作は漫画家・福田秀氏が「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて今年11月まで連載していた同題作品で、ドラマ版は初回4.1%でスタート。投資会社でさまざまな事情を抱えた“訳アリ人材”をバックアップしていく主人公・三星大陽を演じた竜星は、昨年度前期のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』にも出演していた。同ドラマでは“ニーニー”こと比嘉賢秀を演じていたが、その破天荒なキャラクターが視聴者にインパクトを残していたために、『スタンドUPスタート』を視聴したネットユーザーからは「ニーニーにしか見えない」という声も。全話平均は3.3%に終わった。
今年の初回視聴率ワースト1位は、堀田真由主演で10月22日から放送されている『たとえあなたを忘れても』。『日曜の夜ぐらいは…』『何曜日に生まれたの』と同じテレビ朝日系「日曜10時」枠でオンエア中だが、主人公・河野美璃(堀田)は生活苦のピアノ講師、相手役の青木空(萩原利久)も記憶を失ってしまう「解離性健忘症」という障害を抱えているなど、ネット上ではやはり「設定が重い」という声が聞こえてくる。初回3.6%で発進後、そのまま3%台を推移している。
日テレドラマ、作品は高評価も視聴率は低迷
このように、ワースト10以内には、テレビ朝日系「日曜10時」枠の全3作がすべてランクイン。同枠は、大物脚本家によるオリジナル作品を重点的に編成していく方針だというが、シリアスな設定の路線変更を検討したほうがいいのかもしれない。
一方、初回ランキングトップ10には1作も入っていなかった日本テレビ系のドラマが、ワースト10だと2作ランクイン。『ブラッシュアップライフ』も『だが、情熱はある』も作品自体の評価は高く、動画配信サービス「Tver」では大健闘していたが、今年、同局の連ドラは、2ケタ視聴率をマークした作品がゼロとなっている。現在放送中の作品が今からでも盛り上がるといいが、果たして……。