北野武が構想に30年を費やしたという映画『首』が11月23日に封切られ、最新の全国週末興行成績ランキング(興行通信社調べ、11月24~26日)で初登場3位を獲得。同日公開の二階堂ふみとGACKTのダブル主演作『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』、上映4週目の『ゴジラ-1.0』(11月3日公開)にはかなわなかったものの、週末3日間で動員17万5200人、興収2億6100万円をあげた。
『首』は、本能寺の変を壮大なスケールで活写した戦国スペクタクル映画。北野自ら「ビートたけし」名義で主人公・羽柴秀吉役を務め、明智光秀役に西島秀俊、織田信長役に加瀬亮、黒田官兵衛役に浅野忠信らがキャスティングされている。
「武将や農民などさまざまな身分の人物の野望や策略を、バイオレンスと笑いを交えながら描いており、鑑賞者からは『北野武ワールド全開』という声が上がっています。一方で、首が吹っ飛んでいく斬首シーンなど、グロテスクな描写が苦手だったと漏らす人も見受けられ、本作の評価は賛否両論といえるでしょう」(芸能ライター)
北野監督といえば、1998年公開の『HANA-BI』が『ヴェネツィア国際映画祭 グランプリ(金獅子賞)』を受賞するなど、日本を代表する映画監督の一人。以下では、その興行成績をランキング形式にして振り返る。
北野武監督映画、興行収入ランキング【2023年12月3日最新】
第1位:『座頭市』(03年9月6日公開) 28.5億円
第2位:『龍三と七人の子分たち』(15年4月25日公開)16億円
第3位:『アウトレイジ 最終章』(17年10月7日公開)15.9億円
第4位:『アウトレイジ ビヨンド』(12年10月6日公開)14.5億円
第5位:『BROTHER』(01年1月27日公開) 8.9億円
第6位:『その男、凶暴につき』(89年8月12日公開) 7.8億円
第7位『アウトレイジ』(10年6月12日公開)7.5億円
第8位:『Dolls』(02年10月12日公開)6.3億円
第9位:『3-4X10月』(90年9月15日公開)2.3億円
第10位:『ソナチネ』(93年6月5日公開)0.8億円
※最終興行収入が不明の『あの夏、いちばん静かな海。』(91年10月19日公開)『みんな〜やってるか!』(95年2月11日公開)『キッズ・リターン』(96年7月27日公開)『HANA-BI』(98年1月24日公開)『菊次郎の夏』(99年6月5日公開)『TAKESHIS'』(05年11月5日公開)『監督・ばんざい!』(07年6月2日公開)『アキレスと亀』(08年9月20日公開)は除く
1位は『座頭市』、時代劇では異例の“タップダンスシーン”が大反響
第1位は、目が見えない謎の侠客・市(いち)の活躍を描いた作品『座頭市』で28.5億円。『ヴェネツィア国際映画祭』の監督賞(銀獅子賞)など、国内外でさまざまな賞を受賞した。
「同作の終盤には、時代劇としては異例中の異例といえる、下駄を履いた農民たちによる“タップダンスシーン”があり、これが大きな反響を呼んだ。『このシーンは必要あるのか?』『とんちんかんすぎる』と首を傾げる人もいた一方、これこそ“北野作品らしさ”と好意的に捉える人も少なからずおり、賛否両論を巻き起こしました。ただいずれにせよ、多くの人の記憶に深く刻まれるシーンになったのは間違いありません」(同)
第2位は藤竜也主演の『龍三と七人の子分たち』で16億円。オレオレ詐欺に引っかかった元ヤクザの龍三が、金なし、先なし、怖いモノなしの“ジジイ軍団”を率い、世直しに立ち上がるという痛快アクションコメディ。中高年~シニア層へのウケが良く、興行成績が伸びたようだ。
第3位は北野監督唯一のシリーズもの『アウトレイジ 最終章』で15.9億円。同シリーズは、ヤクザ抗争を描く3部作で、1作目の『アウトレイジ』、2作目の『アウトレイジ ビヨンド』もそれぞれ7.5億円、14.5億円を記録した。見どころはインパクトのある暴力描写で、石橋蓮司演じる村瀬組組長が歯の治療中に襲撃され、口の中を治療用ドリルでひっかき回されるというシーン(1作目)は特に大きな反響を呼んだ。
一方、最終興行収入が判明している中で最下位になったのが『ソナチネ』。沖縄の抗争に助っ人として送り込まれたヤクザが激しい戦いに巻き込まれていく姿を描くバイオレンスアクションだ。北野監督自身が「コケた」とよくネタにしているものの、同作は『カンヌ国際映画祭「ある視点」部門』に選出され、欧州では高い評価を受けた。
果たして『首』は、北野作品ランキングの上位に食い込めるのか。第3位の前作『アウトレイジ 最終章』の初動は、動員25万人、興収3億5200万円だったことを考えると、トップ3入りは今後の伸び次第と考えられる。口コミが広がり、客足が伸びることを期待したい。