11月23日から大ヒット上映中の『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』(二階堂ふみとGACKTのダブル主演)。公開2週目の週末を経て、累計興行収入は11億5000万円を突破したと伝えられている。
同映画は『パタリロ!』(白泉社)などで知られる漫画家・魔夜峰央氏が、「花とゆめ」(同)の別冊で3回に分けて連載した同題作品を原作とするコメディもの。2019年2月に実写映画第1弾『翔んで埼玉』が公開された。シリーズを通して、“埼玉県民が東京都民から迫害を受ける”という世界で、東京都知事の息子・壇ノ浦百美(二階堂)と埼玉県の大地主の子息・麻実麗(GACKT)が活躍する姿を描く。
2作の監督を務めたのは武内英樹氏。同氏は元フジテレビ所属で、同局の1998年7月期ドラマ『神様、もう少しだけ』(金城武主演)や05年7月期放送の『電車男』(伊東美咲と伊藤淳史のダブル主演)の演出などを担当。
「“HIV感染”をテーマにした『神様、もう少しだけ』は最終回で視聴率28.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を叩き出し、全話を通しての平均も22.5%と好成績でフィニッシュ。また、ネット掲示板から生まれた物語を実写ドラマ化した『電車男』の最終回も25.5%、全話平均21.2%を記録しました」(芸能ライター)
そのほか、上野樹里と玉木宏のダブル主演で06年10月期に放送された『のだめカンタービレ』は漫画家・二ノ宮知子氏の同題作品(講談社)の実写化で、こちらも全話平均18.9%をマーク。08年スペシャルドラマ『のだめカンタービレ in ヨーロッパ』(1月4日放送の『Special Lesson 1』は18.9%、同5日放送の『Special Lesson 2』は21.0%)を経て、09~10年にかけて映画『のだめカンタービレ 最終楽章 前編/後編』も公開。武内氏は同作で映画監督デビューを果たした。
第1位は『テルマエ・ロマエ』で59.8億円! 第2弾も大ヒット
現在公開中の『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』と、公開時期未定の『はたらく細胞』(主演も未発表)を除き、武内氏が監督を務めた映画は全7作。その最終興行収入をランキング化すると、最も成績が良かったのは12年4月公開の『テルマエ・ロマエ』(阿部寛主演)の59.8億円だった。
漫画家・ヤマザキマリ氏の同題作品(エンターブレイン)の実写化で、古代ローマの浴場設計技師・ルシウス(阿部)が、ローマの公衆浴場から21世紀の日本の銭湯にタイムスリップし、その設備や工夫をローマに持ち帰って反映させていく……というストーリー。上戸彩や市村正親、北村一輝らも出演し、14年4月には実写第2弾の『テルマエ・ロマエ II』も公開した。こちらは最終興収44.2億円で、武内氏の監督作では第2位の成績。
第3位は『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』(09年12月公開)の41.0億円で、第4位に『翔んで埼玉』(19年2月公開)の37.6億円が食い込み、第5位が『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(10年4月公開)の37.2億円となっている。
『劇場版 ルパンの娘』は最終興収4億4000万円と大コケ
まさに日本ドラマ界、日本映画界でも屈指のヒットメーカーといえる武内氏だが、第6位の『今夜、ロマンス劇場で』(18年2月公開、綾瀬はるか主演)は最終興収が一気に落ちる結果に。同作は、映画監督志望の牧野健司(坂口健太郎)が通う映画館「ロマンス劇場」で憧れのモノクロ映画のヒロイン・美雪(綾瀬)と出会い、彼女に色とりどりの現実の世界を案内していくうちに互いに惹かれ合う……というラブストーリー。最終興収10.2億円と物足りない数字に終わったものの、一応“10億円超え”は達成した。
最下位の『劇場版 ルパンの娘』(21年10月公開、深田恭子主演)は、最終興収4億4000万円と、唯一の大コケ。小説家・横関大氏の同題作品シリーズ(講談社)が原作で、19年7月期と20年10月期にも深田主演の連続ドラマを放送し、満を持して映画化。武内氏は連ドラ版の演出にも携わっていたが、第1作目は全話平均7.1%、第2作目の全話平均も5.7%と“爆死”。それだけに、公開前から「ヒットは厳しいだろう」と業界内外で不安視されていた。
とはいえ、監督作のほとんどが好成績を残している武内氏。『テルマエ・ロマエ』と『のだめカンタービレ』はいずれも第2作目が第1作目を超えられなかったが、『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』は前作を超えられるだろうか。
武内英樹監督映画、興行収入ランキング【2023年12月7日最新】
第1位:『テルマエ・ロマエ』 59.8億円
第2位:『テルマエ・ロマエ II』 44.2億円
第3位:『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』 41.0億円
第4位:『翔んで埼玉』 37.6億円
第5位:『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』 37.2億円
第6位:『今夜、ロマンス劇場で』 10.2億円
第7位:『劇場版 ルパンの娘』 4億4000万円
※一般社団法人日本映画製作者連盟資料、「キネマ旬報」(キネマ旬報社)より