• 日. 12月 22nd, 2024

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明日あなたが被害にあうかもしれない

木下優樹菜に“叩かれキャラ”を背負わせる、フジテレビのエグさ

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

<今回の有名人>
「表に出続けるというのは、使命でもあると思っている」木下優樹菜
『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系、12月19日)

 2020年7月6日、大手芸能事務所・プラチナムプロダクションが、タレント・木下優樹菜との契約を解除したこと、また彼女が芸能界から引退することを発表した。

 つまり、優樹菜は一般人となったわけだが、11月10日放送の『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)、12月19日放送の『突然ですが占ってもいいですか?』(同)に出演するなど、芸能活動を再開させているようだ。彼女が一般人なのか芸能人なのかいまいちわからないが、番組を見ていると「本格的に復帰したいのだろうな」という印象を受ける。

 おそらくイメージを上げるためだろう。優樹菜は『突然ですが占ってもいいですか?』に、サングラスをかけた2人の娘さんと一緒に出演。子どもたちが自分の作る料理を楽しみにしてくれていると話したり、子育ての悩みを打ち明けるなど、“良き母”“等身大の母”であることをアピールしていた。しかし、多分こんなことでは彼女のイメージは回復しないだろう。

 実際、ネットを中心に、優樹菜がテレビに出るたび、芸能界復帰に反対する声が上がる。本人はあまりわかっていないようだが、なぜこんなにも叩かれるのかというと、タピオカ騒動の後始末がまだ残っているからではないだろうか。

木下優樹菜が起こしたタピオカ騒動とは?

 タピオカ騒動をざっと振り返ってみよう。優樹菜のお姉さんはタピオカ店で働いていたが、給料の未払いなど、オーナーとの間にトラブルを抱えていた。優樹菜はそのタピオカ店を自身のインスタグラムで紹介するなど、宣言に貢献してあげたという意識があったのだろう。トラブルを知った彼女は、タピオカ店のオーナーに対し、インスタグラムのダイレクトメール(DM)で、「弁護士立てて、法的処理、いくらでもできるからこれからの出方次第でこっちも事務所総出でやりますね」「いい年こいたばばあ」などと、恫喝めいたメッセージを送信。そのDMのスクリーンショットが匿名の人物により、SNSに晒されたことにより大炎上した。

 のちに優樹菜は、「いくら大切な家族のためのこととはいえ、一方的なすごく幼稚な発言だったと思います」と謝罪したが、「週刊女性」(主婦と生活社)によると、タピオカ店には元夫であるフジモンこと藤原敏史と実母、そして優樹菜で謝罪に出向いたものの、留守で直接の謝罪はできていないとのこと。単に両者のスケジュールが合わなかった可能性もあるし、タピオカ店側が訴訟に備えて、不必要な接触をしないようにしていた可能性もあるが、社会的影響力のある芸能人が一般人相手に“ヤラかしておいて、謝っていない”というのは、相当イメージが悪いだろう。

 タピオカ店側は優樹菜に損害賠償を請求する民事裁判を起こし、東京地裁は彼女に40万円の支払いを命じた。優樹菜の発言は脅迫であると裁判所は判断したわけで、彼女にとっては相当なイメージダウンだ。だから、もし優樹菜が芸能界に戻りたい、テレビに出たいというのなら、自身のYouTubeチャンネルのような“ホーム”ではなく、きちんと公に謝罪する必要があるのではないだろうか。

タピオカ騒動は終わったこと? 「自分は被害者」のスタンスを崩さない木下優樹菜

 人気芸能人としての地位を棒に振ってまで、なぜ優樹菜は頑なに公に謝罪しないのか私には理解できないが、もしかしたらそれは彼女の性格によるものなのかもしれない。

 『突然ですが占ってもいいですか?』に出演した優樹菜のお嬢さんによると、優樹菜は子どもを怒った後、「何もなかったようにしてくる」そうだ。つまり、その時の感情にまかせて、自分の言いたいことを言うが、気が済んだらもう終わり――ということなのだろう。その発言が周囲にどんな影響を及ぼすか、言われた相手がどんな気持ちになるかについては考えないタイプなのかもしれない。

 タピオカ騒動も、“もう終わったこと”だからなのだろうか。優樹菜は「自分は被害者」というスタンスを崩さない。「いっぱい叩かれても表に出続けるというのは、使命でもあると思っている」「『こんなに叩かれているのに出ているユッキーナ、私も頑張れる』って言ってくれる人がいる」と話していた。叩かれる原因を作ったのは自分なのに、そこをスルーする優樹菜にネット上では批判が噴出することに。

 当の優樹菜は、地上波のテレビ復帰に手応えを感じたのだろうか、インスタグラムのストーリーズに「オンエア見てくれてたっくさんのあたたかメッセージいただいてます。本当ありがとう~」「なんか一部メディアはとにかくやたらと悪口書きたいかもだけど漢字とか間違えたり内容を変えたりするの仕事としてどうなの?って感じでやんす卍笑 かつては私の一般の親友を優樹菜として盗撮して載せたり。謝罪もされてないし~」と投稿し、自身のテレビ出演をネガティブに報じるマスコミを挑発したのだった。

 騒動を謝罪せず、「被害者」と主張する優樹菜と、そんな彼女を叩くネットユーザー、その様子を追うマスコミという構図が見えてくるが、一番エグいなぁと思うのは、3者いずれでもなく、優樹菜を起用しているフジテレビだ。

 昨今、コンプライアンスを重視するテレビ局は、視聴者に“タピオカ店とのトラブルを円満解決した”という印象を与えられていない優樹菜を起用しないだろう。にもかかわらず、フジテレビが優樹菜を使うのは、コンプラの遵守より、彼女に“叩かれキャラ”を背負わせ、意図的に炎上を招くことで話題性を高めようとしているのだと思う。今の優樹菜にとってフジテレビは“蜘蛛の糸”のようなもので、その細い糸にすがるしかないと考えると、同社にエグさを感じざるを得ない。

 フジテレビといえば、“台本がない”とされる恋愛リアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラー・木村花さんの自死が思い出される。彼女は番組に出演したことで誹謗中傷に晒され、自ら命を絶ち、木村さんのお母さんはフジテレビら3社を相手に訴訟を起こしている。

 訴状には「リアルであることを積極的に宣伝し、出演者が標的になりやすい構造をつくっていた」と書かれていたそうだが、優樹菜もまさに今、フジテレビがつくった「標的になりやすい構造」の中に組み込まれているといえるのではないか。彼女は事務所に所属していないから間に入って守ってくれる人もおらず、芸能界戻りたさに何でも引き受けてしまい、ますます激しいバッシングに晒されることは想像に難くない。

 優樹菜は今、なりふり構っていられないのかもしれないが、彼女にはお子さんが2人もいるのだ。バッシングや嫌がらせの矛先がお子さんに向かないとは言い切れないのだから、リスクのあるキャラ売りをしたり、お子さんをテレビに出したりするより、騒動をあらためて謝り、被害者としての振る舞いをやめたほうが、よっぽど芸能界復帰は早くなるのではないだろうか。

 「過ちては改むるに憚ること勿れ」というが、今からでも決して遅くない。お子さんの安全と教育のためにも、そうしたほうがいいように思えてならない。

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