創業者・ジャニー喜多川氏(2019年に死去)の性加害問題を受けて、被害者の補償と救済に専念する会社となったSMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)。4月25日、同社は英国の公共放送・BBCが日本時間3月30日に放送したドキュメンタリー番組『捕食者の影 ジャニーズ解体のその後』(BBCニュースチャンネル)の内容をめぐり、訂正と謝罪を要請する文書を送ったことを公表。ネット上ではさまざまな意見が飛び交っている。
目次
・東山紀之、「言論の自由」発言で物議
・SMILE-UP.、BBCは「東山の発言を意図的にゆがめて放送」
・BBCに約束違反を指摘も……
SMILE-UP.・東山紀之、BBC番組での「言論の自由」発言で物議
BBCは昨年3月にジャニー氏の性加害疑惑に迫ったドキュメンタリー『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル(原題:Predator:The Secret Scandal of J-Pop)』を放送。事務所側は同年9月に記者会見を開き、ジャニー氏の姪である藤島ジュリー景子氏(当時は事務所の代表取締役社長)が叔父の性加害を認め、謝罪するに至った。
「その後、事務所はSMILE-UP.へと社名を変更し、被害者の補償業務を担う会社に生まれ変わりました。また、年内でタレント業を引退した少年隊・東山紀之が社長に就任。そして東山はBBCによるドキュメンタリー第2弾『捕食者の影 ジャニーズ解体のその後』に登場し、ジャーナリストのモビーン・アザー氏のインタビューに応じたんです」(男性アイドルに詳しい記者)
その番組放送日の3月30日、BBC公式YouTubeチャンネル「BBC News Japan」で、「【単独取材】ジャニーズ解体のその後……SMILE-UP. 東山社長、BBCの多数の質問に答える」とのタイトルの動画を配信。東山がアザー氏の質問に答える約35分の映像で、現在の業務や被害者に対する誹謗中傷などについて語っている。
アザー氏から、被害者が真実を語っていないかのようにネット上で誹謗中傷する人たちに「あなたからいま直接よびかけてもらえますか? そういう人たちに何とおっしゃいますか?」と尋ねられた東山は、「何をもって誹謗中傷とするのか」をアザー氏に問いかけた上で、「言論の自由もあると思うんですね。僕は別に誹謗中傷を推奨してるわけではなく、たぶんその人にとってはそれが正義の意見なんだろうなと思うときもあります」「僕自身がそれを言うことによって、誹謗中傷が増える可能性もあるので」などとコメント。
この回答シーンは「BBC News Japan」のサイトや公式X(旧Twitter)でも公開され、SNS上で「『言論の自由』とはそこで使う言葉じゃないと思う」「東山さんは被害者への誹謗中傷を止めなければいけない立場。『言論の自由がある』って、絶対にあなたが言っちゃダメ」などと物議を醸した。
SMILE-UP.、「東山の発言を意図的にゆがめて放送」BBCに抗議
オンエアからおよそ1カ月後の4月25日、SMILE-UP.は公式サイトを更新し、「BBCへの抗議文書の送付について」と題したお知らせをアップ。
前述の誹謗中傷に関する発言部分について、「実際の東山の発言の趣旨とは異なって放送されており、本番組の放送後、東山に対して『誹謗中傷を助長している』などといった誤った批判が数多くなされている状況にあります」(原文ママ、以下同)と怒りをあらわにした。
アザー氏とのインタビューにおいて、「東山は、誹謗中傷を無くしていきたいと思っている旨を明確に述べていたにもかかわらず、本番組及びその後の長編インタビュー映像は、BBCによって、東山の発言のうち、『なるべくなら誹謗中傷は無くしていきたいと僕自身も思っています』との発言部分が省略され、全体として、放送された内容が、東山の発言の趣旨とは異なってしまっています」と主張。
「弊社は、BBCによる東山のインタビューの編集の状況について、本番組及び本番組の放送後の長編映像と東山の取材時に録音した音声とを比較検証することで確認いたしました」などと根拠づけた。
SMILE-UP.は放送に先立ち、東山の「言論の自由もある」といった主旨の言葉に関して、「発言の一部のみを切り取って放送されることがないよう、念のため申し添えます」と伝えていたというが、「BBCは、東山の発言を意図的にゆがめて放送し、視聴者の印象を操作しようとするものであると言わざるを得ず、大変遺憾に存じます」ともつづっている。
こうしたSMILE-UP.の見解を受け、SNS上のファンは「事務所が動いてくれてうれしい。東山さんの名誉を守ってほしい」「ずっと矢面に立ってくれるヒガシには感謝しているから、叩かれっぱなしじゃなくて安心した」「事務所はこれからも毅然とした態度をとってほしい」と、今回の対応を支持しているようだ。
一方で、「番組本編も長尺映像も見たけど、発言の切り抜きとは思わなかった」「どんな意図であっても『誹謗中傷は言論の自由』なんて発言をすること自体が異常」「東山氏が『言論の自由』の意味を履き違えてるのがダメって話なのに、論点をずらして“被害者ムーブ”をするのはさすがに卑怯では?」といった、辛らつな意見も続出。
今回の対応には賛否両論が分かれている状況だ。
SMILE-UP.、BBCに約束違反を指摘も……
またSMILE-UP.側は、番組放送後の4月10日に取材班のアザー氏、メグミ・インマン氏が日本外国特派員協会で開いた会見に関しても言及。
「本番組の取材の一環で両氏に面談した被害者の方々(以下『当該被害者』といいます。)に関する両氏の発言により、当該被害者は誹謗中傷に晒される状況に陥っており、当該被害者の人権が侵害されたものと言わざるを得ない状況にあります」「これらの状況を受け、弊社は、BBCに対して、厳正に抗議するとともに、訂正と謝罪を要請する文書を送付いたしました」などと説明している。
SMILE-UP.によれば、今年1月29日、番組準備のためにアザー氏、インマン氏と同社が打ち合せを行った際、「ジャニー氏による性加害の実態をできるだけ幅広く取材いただくため、弊社における被害補償業務にボランティアで協力してくださっている当該被害者と面談していただくことを提案したところ、両名も『ぜひお目にかかりたい』と了解しました」とのこと。
プライバシー等の観点から、当該被害者への「面談の事実及び面談の内容を番組で放送しないことはもとより、その他の方法によっても公にしないこと」をアザー氏、インマン氏と約束した上での面談協力だったため、番組や会見において面談を行なった事実を明かしたことは「弊社との間との約束違反」になると指摘。
「実際に、当該被害者は誹謗中傷に晒される状況に陥っており、当該被害者の人権が侵害されたものと言わざるを得ず、弊社としても大変遺憾に存じます」と訴えた。
しかし、これについても一部のSNSユーザーは「ほかの被害者を誹謗中傷から守ることもしていないのに、『弊社における被害補償業務にボランティアで協力してくださっている当該被害者』だけを守るというのはおかしい」といった困惑の声を上げていた。
「なお、被害を告発した元ジャニーズJr.の二本樹顕理氏は4月26日発売の『フライデー』(講談社)の取材に応じています。誹謗中傷によって妻の心労が絶えず、この4月に日本を離れて彼女の祖国・アイルランドに生活の拠点を移したそうです。誹謗中傷問題に関して、事務所には『HPで注意喚起するだけでなく、誹謗中傷に対して具体的な策を講じてほしい』などとコメントしていました」(同)
SMILE-UP.は今後も被害者に寄り添いながら、補償に取り組んでいってほしいものだ。