今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。
いまだ感染が拡大している新型コロナウイルス。徐々にワクチンの接種が進んではいるが、現状では12歳以下の子どもは接種対象外となっている。ウイルスに感染した子どもが重症化するケースは成人と比べると少ないようだが、未就学児や小学生、中学生の子どもを持つ親たちは、大きな不安を抱えていると報じられている。今回は、「子どもが通っている保育園で、コロナウイルス陽性者が出た」という女性のエピソードを紹介する。
「いつか希望の仕事に戻りたい……」パートをしながら子どもを保育園に預けるママ
首都圏に住む恵美さん(仮名・35歳)は、1歳になる娘の育児をしながらフルタイムのパートタイマーとして働いている。
「結婚前は編集プロダクションに務め、いろいろな出版社から依頼を受けて書籍や企業の冊子などを作っていました。やりがいはあったのですが、残業や休日出勤も多く、妊娠をきっかけに退社。今は、近所の生花やガーデニング用品を専門に扱うホームセンターで働いています」
恵美さんのように、妊娠や出産がきっかけで、正規雇用から時短勤務や派遣社員などの“非正規雇用”で働くようになった人は多いだろう。
「保育園に入園するまでは、周りは大手企業に勤務するようなキャリア志向のママさんたちばかりかと思っていたのですが、自分のようにフルタイムで働くパートタイマーや、派遣社員のママさんもいることがわかり、立場が近いママとはLINEでもよくメッセージを送り合っています」
特に去年は、コロナ禍の影響で、あえなく仕事が休業になってしまった人も、少なからずいたという。
「私も店が休業した期間があり、その時は収入も減りました。ママ友とは『仕事がなくなって保育園を退園することになったらどうしよう』と、LINEで互いの不安を吐き出し合っていましたね」
ママ友とは、“2人目を作るかどうか”ということも話すそうだ。
「私も2人目が欲しいと思うのですが、コロナ禍の中で妊娠するのが不安なのと、仕事もどうなるのかわからないため、子作りには積極的になれないでいます……。最近、2人目の子どもを出産したママが、同じクラスにいたのですが、ほかのママ友と『今の時期に出産するのは怖いよね』ってLINEをしています」
なお、恵美さんの夫は自動車販売店に勤めているため、休日出勤もあるという。
「うちは共働きのため、娘が0歳の頃から大型の保育園に預けています。出産をきっかけに、夫の地元へ引っ越したのですが、夫の実家は工場を経営していて、まだ両親とも働いているので娘の育児は頼めないんです。私の実家は北関東なので、気軽に親に来てもらうこともできません。そのため、保育園にどうしても子どもを預けたかったんです。いつかはまた編集の仕事もしたいと思っているし、復職のためにも退園は絶対にしたくないので、今の仕事を続けています」
このところニュースでも、園児や職員のコロナ陽性者や濃厚接触者の増加が原因で、保育園の休園が相次いでいると報道されている。恵美さんの娘が通う保育園も例外ではなかった。
「園から、親も毎朝検温を行うよう指導があり、少しでも体調に異変があれば休ませるようにするなど、今まで以上に体調管理を徹底していたんです。先月、職員がPCR検査を受けたという連絡が来てからは特に、コロナ陽性者がどんどん身近になってきていると感じましたね。結局、職員は陰性で安心していたら、土曜保育でたまたま一緒だった子が、陽性と診断されたと聞いて、とても驚きました」
まさかの園児のコロナ感染に、最初は事態が飲み込めなかったという。
「感染したのは、普段は別の園に通っている子でした。本来ならうちの園で預かることはなかったのですが、その子が通っていたのはビルの一室を使った小規模保育で、保育士の人数が足りなかったため、特別に預かることになったそうなんです」
人手不足のための合同保育。不運にも同じ日に登園していた恵美さんの娘は濃厚接触者になった。
「子どもたちは、熱中症予防もあり園ではマスクを着けないで過ごしているので、濃厚接触に認定されてしまいました。それでも、PCR検査を受けられたのは、園児のコロナ感染の連絡を受けた翌々日。もちろん、登園も禁止され、陰性の場合でも『2週間の自宅待機』と園から言い渡されました」
まさかの事態に戸惑ったという恵美さん。自身の感染防止対策も十分でなかったため、家庭内感染が起きないか不安だったという。
「夫も私もまだワクチンを接種していませんでしたが、子どもが万が一陽性だったとしても、部屋に隔離して接触しないわけにはいかない。『どうか陰性でありますように』と祈る気持ちでしたね。この時は、同じように土曜保育に預けていたママ友にだけ、『どうする? 困ったよね』とLINEで本音を伝えました」
なお、保育園からは、濃厚接触者に該当しない園児の登園は、「保護者の判断に任せる」と言われたとか。
「グループチャット内でも、ママたちは『預けたいけど心配だよね……』と話していました。出社が必要な仕事をしているママは、『仕方なく預ける』と言っていましたし、リモートワークや休みが取れそうなママは、数日間、保育園を休ませていましたよ」
2週間の自宅待機。心の支えはママ友とのLINE
PCR検査の結果、幸いにも、恵美さんの娘は陰性だったが、2週間の間は保育園に登園できず、自宅育児をすることとなった。
「夫は仕事を休むわけにはいかず、私が仕事を休んで娘の面倒を見ることに。2週間分のパートの収入がなくなるのは、かなり痛手でした……。同じように、パートタイマーのママ友と『つらいよね』とLINEで励まし合いました」
ほぼ在宅で娘の育児をしている時に頼りになったのは、ママ友とのLINEだったという。
「自分の家族が濃厚接触者になったことって、周りの人にも相談しづらい内容なんです。そのため、同じような境遇になったママ友とのLINEが心の支えになりました。ハマっている韓国ドラマを教えてもらったり、スタンプを送ったりしているうちに、気分が明るくなりました」
そんな恵美さんだが、「一部のママ友がとった行動に、恐怖を感じた」とも語る。
「あるママが、コロナに感染したのはどの子なのか、保育園に問い合わせたようなんです。グループチャットでも、『教えてもらえなかった』と不満を漏らしていて、『怖いな』と思ってしまいました。今はいつどこで陽性者や濃厚接触者になるかわからないし、感染予防を徹底するしかない状況。娘が濃厚接触者になった経験から、自分も感染したたり、気づかぬうちに周りにうつしてしまったらどうしようって不安でしたが、もしも今後、周りで陽性者が出ても、犯人探しをしたり、うわさ話をしたりしないように気をつけたいと思いました」
まだまだ終息が見えない新型コロナ。特に小さな子どもを持つ親は、「重症化の可能性は低い」といわれつつも、ワクチン接種の見通しがつかない現状に不安や苛立ちを感じることもあるだろう。恵美さんがいうように、もしも周りで陽性者が出た場合でも、誰が感染したかという詮索はしないようにしたいものだ。