かつて、東海地方に300店近くを展開していた回転寿司チェーン「アトムボーイ」。残念ながら現在では消息がつかめない同店が気になり、追跡してみました。
目次
・東海エリアにあった回転寿司【アトムボーイ】とは? 消息つかめず
・200店舗超から絶滅したと思いきや……
・【アトム】の寿司を実食! 日本海のネタがハイレベルすぎた
・【アトムボーイ】から【アトム】へ、超進化していた
東海エリアにあった回転寿司【アトムボーイ】とは? 消息つかめず
回転寿司戦国時代ともいえる現在。スシロー、くら寿司、はま寿司などが勢力を振るっていますが、1980〜90年代に東海エリアで多店舗を展開していた「アトムボーイ」はご存じでしょうか?
その名の通り、『鉄腕アトム』が店の看板キャラクターの回転寿司チェーンで、静岡出身の筆者が幼少の頃は、回転寿司といえば「アトムボーイ」一択でした。
なぜ、そんなアトムボーイの話をしているかというと、あれだけ人気の店だったのに、ネットでいくら検索しても2000年代以降の消息が追跡できないんです。ただ、福井県に「海鮮アトム」という、それらしき店が残っているようですが、これはあのアトムボーイなのか? それともまったく別物なのか……?
直接「海鮮アトム」に聞いてみることにします!
【アトムボーイ】200店舗超から絶滅したと思いきや……
今回、海鮮アトムについて話を聞いたのは、株式会社アトムで寿司事業を統括する眞木さん。眞木さんによれば、ズバリ、海鮮アトムはあのアトムボーイにルーツがあるとのこと!
思わず胸が熱くなりますが、そうは言っても海鮮アトムの姿は見ての通り。アトムボーイの面影は皆無です。あのアトムボーイが、なぜこの姿に変わったのか? 昭和から令和を生き抜いたアトムボーイの知られざる激動の変遷を聞いてみます!
回転寿司「アトムボーイ」、「サザエさん」になる可能性もあった!
時代はさかのぼり、昭和47年(1972年)1月。福井県福井市に「株式会社徳兵衛寿司」(現株式会社アトム)が誕生。昭和52年(77年)10月に「株式会社元禄寿司」に商号変更しますが、昭和55年(80年)6月、大きな転機が訪れます。
「日本テレビ音楽株式会社」(現契約先は株式会社手塚プロダクション)と『鉄腕アトム』のキャラクター使用許諾契約を締結しました。なぜ『鉄腕アトム』だったのかというと、当時、誰もが知っているキャラクターといえば『鉄腕アトム』か『サザエさん』の2つで、どちらにするか検討した結果、アトムに落ち着いたんだとか。アトムではなく、サザエさんになっていた可能性もあったとは衝撃!
そして、アトムを使った「アトムボーイ」の1号店が55年7月、岐阜県にオープン。使用許諾を得てから1カ月で出店の超スピードです。そこからは東海地方で出店を重ね、最盛期は200店舗を超えて「300店近くはあったと思います」とのこと。
こうして東海地方でアトムボーイが勢力を伸ばすのと同時期に、実は関西方面でも同店名「アトムボーイ」の回転寿司屋が展開されていたとか! 運営会社は別ですが、「上層部の人々が示し合わせて展開していたのでは」とのことで、西と東でアトムボーイが増えていったようです。
100円寿司「アトムボーイ」と高級寿司「海鮮アトム」に分裂
出店を増やす中で、アトムボーイは2路線に分かれていきます。安価で寿司が食べられる100円寿司路線の「アトムボーイ」と、高級志向の「海鮮アトム」。そして、時代の流れを受けて100円寿司からは手を引き、高級志向に一本化することになります。
そして現在は、株式会社アトム創業の地・福井県のみで「海鮮アトム」9店舗を運営。福井でもアトムボーイを展開していたこともあり、「アトム」の名は親しまれているといいます。
【アトム】の寿司を実食! 日本海のネタがハイレベルすぎた
そんなアトムではいったい、どんな寿司が提供されているのか……? 眞木さんにうかがうと、ちょうど11月1日から株式会社アトムの創立52年を記念した「感謝祭特別メニュー」の提供が始まるとのこと。創業の地、福井県へ感謝を込めた、福井のおいしいネタをそろえているとか。
お言葉に甘えて、感謝祭メニューの「うまいんやざー5貫盛り」を実食させていただきました!
まず、福井甘えびからいただくと……甘い! ねっとりと濃厚な甘えびで、これぞ日本海の幸。太平洋側の魚介ばかり口にしているため、衝撃の甘さです。
続くがさえびは、お初にお目にかかりますが、それも当然。漁れる量が少なく、鮮度が落ちるのが早いため、市場に出回るのが少ない幻のエビなんだとか。こちらも、甘えびと同じほどねっとり濃厚! 旨みが強く感じられます。
白ばい貝は、秋から冬にかけては刺し身(生)で食べるのがおすすめとのこと。食感はコリコリ、わさびがきいて甘みもほのかに感じられます。
そして、たらの子軍艦は甘辛い味付けで日本酒が進みそう。大葉の香りが利いています。
最後に、さばへしこ。さばを塩漬けにして、米糠に1年以上漬け込んで熟成されたものです。口にすると、強めの塩味と味わいがキュッとして、口の中に芳醇な風味が残ります。これは間違いなく日本酒でいきたい!
この5ネタで1,364円は、かなり安いのではないでしょうか? もはや、幼少期に親しんだアトムボーイの面影は皆無ですが、シンプルに絶品。福井の海の豊かさに驚きます。
そして、もうひとつ。感謝祭の目玉メニューが「海鮮丼」(1,969円)。
写真だとわかりにくいのですが、ネタ一切れ一切れの大きさが通常の2倍はあるんです。類を見ないサイズに思わず笑ってしまいました! いくらとウニもたっぷり盛られていて、ホタテの貝殻もビシッ! 見た目にもおめでたい感じがありますね。
1日限定25食なのも納得の豪勢すぎる海鮮丼です。
【アトムボーイ】から【アトム】へ、超進化していた
今回、およそ35年のときを経てアトムボーイと再会を果たしたわけですが、その所感をまとめると以下になります。
①見た目は変わってもアトムの名は生きていた!
②アトムボーイ時代の回転寿司レベルではない
③日本海のネタが抜群においしい
④福井の人がうらやましい
アトムボーイの変遷を追った結果、絶品の寿司にたどり着いてしまった今回。もはやあの頃のアトムボーイの姿は感じられませんでしたが、福井の地では「海鮮アトム」の名はしっかり根付いているとのこと。
今後も末永く同店が続くことに期待するとともに、福井を訪れることがあれば必ずや店を訪問しようと思った次第です。