2017年3月期には5年連続で赤字となっていた高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」。2024年に2店舗が閉店になり、現在19店を展開しています。昨今、高級スーパーの苦戦が窺われるだけに、現在の様子をみてきました。
目次
・【クイーンズ伊勢丹】とは? 2017年まで5年連続赤字、売却も
・【クイーンズ伊勢丹】行ってみた
・430円「チーズデミソースハンバーグ弁当」実食
・高級だけじゃない、庶民もうまく使えるスーパー
【クイーンズ伊勢丹】とは? 2017年まで5年連続赤字
三越伊勢丹ホールディングス傘下の株式会社エムアイフードスタイルが運営する高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」。公式サイトによると、「高品質なプライベートブランドを持つ食品専門のスーパーマーケット」とのことです。
2024年は杉並桃井店、港南台バーズ店が閉店する一方、十条店が新規オープンとなり、現在は首都圏に19店舗を展開しています。
先ごろ発表された三越伊勢丹ホールディングスの2025年3月期第2四半期の決算では、牧野欣功(よしのり)常務が「SM(スーパーマーケット)の伸びが若干低下しているが、消費の二極化の中で高感度上質ニーズをしっかり獲得すれば十分に計画を達成できる」とコメント。
実際、クイーンズ伊勢丹は苦戦が続いており、2017年3月期は売上高497億円、営業損益が11億円で、5年連続の赤字となっています。これを受けて、18年4月、高級スーパー「成城石井」の再建で実績のある投資ファンド、丸の内キャピタルに売却。22年4月からは、再建の目途が立ったとして、三越伊勢丹ホールディングスのもとに戻っています。
【クイーンズ伊勢丹】行ってみた
土曜日の昼12時過ぎ、クイーンズ伊勢丹の笹塚店を訪れました。同店はクイーンズ伊勢丹の中で店舗面積が最大だそう。
ショッピングビルの地下1階にある店に向かうと、エントランスにニワトリやトマトのキャラクターを使ったかわいらしいコーナーが。テーマパークのような雰囲気でちょっとワクワクします。
入口はいくつかあるようですが、筆者が利用したところは、まずインストアベーカリー「クイーンズベーカリー」が目に入ります。この日のセール品で「国産小麦のホテルブレッド」が1個357円(以下、同)。クリスマスケーキのカタログも掲示され、「クイーンズ伊勢丹限定」としてキャンティの「ノエルショコラ4号」が4,428円となっています。
果物コーナーは目にも美しいいちごや梨がズラリ。もちろん価格も相応なので、見るだけで精一杯……。宮城県の「ミガキイチゴ」というブランド品は1,059円。手書きでのポップで商品を丁寧に説明しているので勉強になります。
やっぱり高級スーパーは品質も価格も全然違うわ……と衝撃を受けますが、続く野菜売り場は案外お求めやすいお値段です。クイーンズ伊勢丹は地元の農家さんと契約を結んで野菜を並べているそうで、農家直送コーナーがコンパクトではあるものの、ちゃんと設置されています。
並んでいる野菜は大根が1本80円。葉付きの大根は80〜100円。トマト460円、ミニトマト200〜300円など。大根のサイズは通常の8割くらいの大きさですが、それでも立派なもの。これが80円で買えるなんてビックリです! ちなみに、契約農家コーナーとは別に売られている大根は1本322円でした。
また、おつとめ品の白菜は半分サイズで70〜90円前後とこれまたお手頃。傷みもなくきれいな状態です。
クイーンズ伊勢丹のプライベートブランドにあたる「ISETAN MITSUKOSHI THE FOOD」。レトルト食品や鍋つゆを中心に多くの商品が見つかります。
16年にスタートしたPBですが、他スーパーでは見られないようなオシャレなラインアップが目立ち、ここでも伊勢丹のセンスを感じられます。
「ガパオライスの具」は357円。「トマトと魚介だしのつゆ」は40%引きで272円。
鮮魚コーナーで目を引いたのは、飛行機で空輸している「北海道産 生ほたて貝柱刺身用」や「広島産 加熱用生かき」。JALの協力があって提供できているそうですが、やることのスケールの大きさがさすが百貨店!
丸魚の扱いは4種程度ですが、この日が「魚の日」だったからか、切り身は豊富にそろっています。
精肉はなんといっても黒毛和牛の取り扱い量がすごい! 見たことのないブランド肉が並んでいて、そのどれもがおいしそう。豚肉も銘柄肉が豊富。どれもお値段は高級ですが、鶏の手羽元はセール価格で100g106円。この鶏肉は合成抗菌剤・抗生物質不使用で、クイーンズ伊勢丹が展開する鶏肉のPB「げんき和どり」なんだだとか。それでこの価格は良心的に思えます。
アルコールコーナーでは、伊勢丹限定パッケージの「THE 軽井沢ビール」330円を発見。伊勢丹のタータンチェックがとてもかわいいですね。
冷凍コーナーでは「ISETAN MITSUKOSHI THE FOOD」の新作「みかん大福」がアピールされています。前のめりの気持ちで商品を手に取ると、冷蔵庫解凍が必要で、すぐには食べられないので諦めました。次回は食べたい!
お惣菜、お弁当コーナーは、高級スーパー感のある美しい盛り付けのお弁当や手間がかかっていそうな商品がちらほら。社員が考案したお弁当もあるそうで、手作りのポップでこだわりポイントを説明しています。
お弁当で最安だったのは、「チーズデミソースハンバーグ弁当」と「デミソースハンバーグ弁当」で430円。こんなしっかりしたハンバーグがはいってこの価格はビックリ! いまどき、コンビニでも買えないのでは?
【クイーンズ伊勢丹】430円「チーズデミソースハンバーグ弁当」実食
購入した「チーズデミソースハンバーグ弁当」を、イートインスペースでさっそく、いただいてみます。ご飯は国産米とのこと。
ハンバーグの大きさは約9cm×約8cm。一口食べてみると、フワッとした柔らかめの食感で、濃いデミグラスソースとチーズのハーモニーがバッチリ。濃厚でもったりとした味わいで、リッチ感があります。
付け合せのブロッコリーにはちゃんと下味がついてて、キャロットラペにはゆずも入っています(原材料にゆずはないので、オレンジかも?)。420円の弁当なのに、細部までしっかりした仕事ぶりに感激!
ふわふわしたハンバーグのおいしさで、あっという間に完食です。イートインスペースでは、筆者のほかにも多くの人が購入した弁当やスイーツ、コーヒーなどを食べていました。赤ちゃん用のチェアも用意されていて、地域民の利用率がかなり高そうな印象を受けます。
【クイーンズ伊勢丹】高級だけじゃない、庶民もうまく使えるスーパー
今回、クイーンズ伊勢丹で驚いたのは、高い商品だけでなく、お手頃価格も豊富だったこと。特に野菜に関しては、契約農家コーナーを上手に使うことでオトクに買い物ができそうです。
この日は手羽元が一般のスーパー価格でしたし、加工肉のコーナーでは、よりどり2つで2,200円や、3つで1,080円などお値打ち感をアピールしていることもあり、手に取りやすそうでした。。
PB「ISETAN MITSUKOSHI THE FOOD」についても、商品展開が魅力的。冷凍コーナーにはスープストックトーキョーのようなスープがずらりと並んでいて、かなりそそられます。
一方で、味の素の冷凍餃子「ギョーザ」が409円だったり、卵10個入りパックが最安351円、牛乳がセール価格で279円だったりと、庶民価格とかけ離れていて仰天しました。
近年、高級スーパーは苦境にあり、大丸百貨店のスーパーだった「ピーコック」はイオンの傘下に。西武百貨店池袋本店の地下などに入っていた「ザ・ガーデン自由が丘」は閉店が相次ぎ、今年、自由が丘本店も閉業しています。
そんな中でも、クイーンズ伊勢丹は確固としたブランド観とお手頃商品の展開がうまいバランスを取れていると感じた今回。今後の展開も楽しみです。