下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
前代未聞の“不祥事会見”だった。時間にして10時間以上、そしてCMなしで自局での“ほぼ生中継”――。中居正広をめぐるスキャンダル対応をめぐり、フジテレビに対し大きな批判が巻き起こり、1月27日の前代未聞の会見中継となったわけだ。
多くのスポンサーが撤退したからこそ、できたことでもあるのだろう。しかも会見では、フジという組織と幹部たちの責任逃れ、マスコミ人とは思えない、適当でいい加減さがどんどん露呈していったのだから驚く。腐ってる。
目次
・今週の女性週刊誌、注目記事ベスト3
・フジテレビ、“オープン”な会見の信用ならない内容
・中居トラブルをスクープした「女性セブン」の面目躍如
・フジテレビのあぜんとするセクハラ体質を表す証拠とは?
・「女性自身」の見事な手のひら返し
今週の女性週刊誌、注目記事ベスト3
第732回(1/23〜1/28発売号より)
1位「中居正広 フジ幹部A氏 歪な絆『きっかけは木村拓哉』」
「フジテレビ解体 トラブル隠蔽500日」(「女性セブン」2月6日号)
2位「中居正広 トンズラ引退でフジテレビがたどる凋落の道」
「『Sから始まる3文字言葉のことばかり』 フジが社員に語らせていたセクハラ」(「週刊女性」2月11日号)
3位「中居正広 引退全真相『俺がSMAP』思い上がり闇堕ち5年」
「木村拓哉『憤懣も悲哀もさらけ出す』巨匠と約束の映画」(「女性自身」2月11日号)
フジテレビ、“オープン”な会見の信用ならない内容
ということで、必然的に中居正広関連ばかりのランキングとなった。それにしても、こんなことが起こるとは。
昨年末に「女性セブン」が中居の女性トラブルを報じてから1カ月ほどで、国民的元アイドルにして名MCとして知られた中居正広が引退に追い込まれ、さらにスキャンダルに加担、隠蔽したとしてフジテレビが大きな批判に晒されている。その存続の危機が叫ばれるほどに。それは現在でも進行中だ。
前回の港浩一社長“閉鎖会見”が大きな批判を浴びたフジは、27日改めて“オープン”な会見を開いたが、肝心なことに言及されると「第三者委員会で」を何度も説明を拒否、さらには「被害女性の体調を考慮」「女性のケアに悪影響」など、さかんに被害者体調を持ち出し、言い訳に使う始末。
しかも、これまで中居に正式な聞き取りをしていないこと、女性にも直接話ができていたいことなど、ろくな調査がなされていないことまで発覚した。よくこれで会食をセッティングしたとされる幹部社員A氏の“関与はない”などと言い切れるものだとあきれれるしかない。そして、まったく信用ならない会見内容だった。
中居トラブルをスクープした「女性セブン」の面目躍如
こうして事態が急ピッチで進む中、ことの発端をスクープした「女性セブン」は、その追及の手を緩めることはない。女性トラブルの後、マネジャーをはじめ関係者が中居の元を去ったことなど、中居の現状についてこう紹介される。
「中居さんは騒動が大きくなる前に、マスコミの目から逃れるためにホテルに避難することも考えていたそうです。ところが、誰にも部屋の手配を頼めず、結局、家から一歩も出られずにいた」(芸能関係者のコメント)
国民的人気者が一瞬にして“孤独”と直面している。目を疑うほどの中居の凋落を象徴するエピソードだ。さらに中居とA氏との“歪な関係”についても詳細が記されていく。若い頃からつるんで酒を飲み麻雀に興じる。A氏が局内でスピード出世できたのも、ひとえに中居の存在にあるということも。
だが「セブン」が批判するのは、中居だけではない。同誌は一貫してフジテレビの責任も追及してきた。今号もしかり。
例えば“失敗会見”で世間から批判の集中砲火を浴びた港社長(昨日辞任を表明)こそ、女性アナをアテンドした“接待文化”の中心にいた人物であり、その港氏の信頼の厚い部下こそA氏であること、さらにフジが今後恐れるのは、世界配信のNetflixでのコンテンツ事業に支障が生じる恐れがあることなどを指摘するのだ。
中居トラブルをスクープした雑誌として面目躍如といっていい。
フジテレビのあぜんとするセクハラ体質を表す証拠とは?
一方で、先週に続き、どうやらネタがないのが他2誌の女性週刊誌だ。特に驚き笑ったのが「週刊女性」。ネタも、そして適当な切り口も見つからなかったのか、お得意(!)の“アンケート”で中居特集(しかも、これはトップ特集でもある)を展開しているのだ。その上、アンケートは2本立てだ。
まず1本目はCM放送見送りをフジに突きつけたスポンサー企業52社に対するアンケートだ。多くの企業がCM差し替えの理由として「総合的な判断」「人権方針」などと回答してきたという。さらに「週女」は企業がフジに戻る条件に関しても質問し、回答を得ている。
まあ、これはよくあるアンケートと言える。ところが2本目がすごい。フジテレビがどんな対応を取るべきかを専門家ではなく、一般視聴者500人にアンケートで答えてもらっているのだから。
その結果、「タレントへの接待禁止」「女性社員の接待参加禁止」「経営陣総退陣」などが上位となったらしい。いやー、それにしても芸能界を、マスメディアを震撼させる危機的状況に対し、アンケート企画で乗り切ろうとするとは、さすが「週女」だ。
しかーし。「週女」のすごさはこのトップ特集にはなく、巻末のワイド「Jam Today」にあった。「『Sから始まる3文字言葉のことばかり』 フジが社員に語らせていたセクハラ」と題されたこの記事は素晴らしい。なにしろ今回大きな問題となっているフジの女性接待会食や女性蔑視のルーツを見事に掘り起こしているのだ。
記事では2冊の本が紹介される。1987年に刊行された『アナ本』、そして1991年に刊行された『アナ本2』だ。これらは女子アナになりたい人に向けられた“アナ本”なのだが、その内容はあぜんとするものばかり。
“新入社員歓迎会で初体験をしつこく質問される女性アナ”“仕事中もSから始まる3文字言葉を朝からずっと質問される女子アナ”“おはようとの言葉とともに肩を抱き寄せる上司” ――そんなセクハラ内部情報が記されたこれらの本だが、しかもこうしたエピソードは、セクハラを諌めるものではなく“面白おかしく、社員に露悪的に語らせたもの”だという。
そして驚くべきことは、この2冊の版元は「フジテレビ出版」、当時のフジの出版事業だということだ。記事はこう指摘している。
「つまり自社の社員の女子アナに対し、数々のセクハラ的行為をしていることを、自社メディアが記している」
さらに、その表紙は当時の人気女子アナたちの“半分ほどバストがあらわになった写真”だという。ひゃー! フジテレビのセクハラ体質を表す、お宝的な証拠書籍だ。そして記事にはこんな一文も。
「女子アナをホステスのように使うフジの体質は令和まで残っているということです」(出版ジャーナリストのコメント)
タイムリーで素晴らしい、フジの体質を発掘暴露する記事だった。
「女性自身」の見事な手のひら返し
最後は「女性自身」。中居の仕事関係者を複数人取材した結果、人柄に疑問を呈す人は、ほとんどいなかったらしい。そして明らかになったのが中居の二面性だ。
「中居さんが撮影現場や会食などで、“黒い部分”を見せていたのは、フジの編成・バラエティ班の一部で、昔からの付き合いがある数人が関わる場面のみだったと思います」(フジテレビ関係者のコメント)
なるほどね。一方で、巨匠・山田洋次監督の新作映画に出演することが決まった元SMAPの木村拓哉を持ち上げまくっている。
「若くしてスターになった木村さんですが、その一方でたくさんの苦労をしているため、人の痛みがわかる優しさがあります」
だってさ。マスコミの手のひら返しが見事だと思わせてくれた「自身」の2本の記事だった。