• 日. 4月 20th, 2025

犯罪データベース

明日あなたが被害にあうかもしれない

『風の谷のナウシカ』が台湾でブームに――思い出された安田成美の“幻の主題歌”と伝説の美声

ByAdmin

4月 19, 2025 #カルチャー, #映画

サイゾーオンラインより】

 日本のアニメーション史に燦然と輝く宮崎駿監督の傑作『風の谷のナウシカ』がこの春に台湾の劇場スクリーンに初登場を果たした。

 3月の公開からわずか数日で台湾全土を席巻し、同月25日までに興行収入は3500万台湾元(約1億6000万円)に到達。

 4月6日まで台北で開催されていた『アニメージュとジブリ展』との相乗効果もあってか、単なる過去作のリバイバルにとどまらない“ブーム”を巻き起こしている。

「台湾で『ナウシカ』が上映されるのは初。それだけにファンの熱気も高く、とくに台湾の人気クリエーターが手掛けた特典ポスターも話題に。ナウシカがメーヴェに乗って王蟲(オーム)の頭上を飛ぶ姿を上空から捉えた斬新な構図で、額装して飾る人まで現れるほどの人気ぶりとなっています。現地メディアの間ではとりわけ久石譲氏による音楽が大絶賛されているようです」(アニメサイト編集者)

 そんなニュースとともに日本で改めて注目を浴びたのが、台湾のファンは知らないであろう女優・安田成美による“幻の主題歌”である。

 安田が歌ったシンボル・テーマソング『風の谷のナウシカ』は、映画公開当時にCMや予告編でこの楽曲が流れ続けた記憶を持つ世代には懐かしい一曲だろう。

 映画公開の数カ月前、アニメ雑誌「アニメージュ」(徳間書店)では「主題歌をキミに歌ってほしい」というキャッチコピーで“ナウシカガール”を全国募集し、7000人以上の応募者の中から選ばれたのが安田だった。

 だが、何故か映画本編には使われていない。

「Z世代には『安田成美』と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、『とんねるず』の木梨憲武の妻といえばわかる人もいるかもしれませんね。『風の谷のナウシカ』は作曲・細野晴臣、作詞・松本隆のビッグネームが手掛け、当時17歳だった安田の歌手デビュー曲として1984年1月にリリースされました。オリコンチャートで最高10位と、デビュー作としては十分すぎるヒットだったにもかかわらず、映画内では“完全スルー”。『シンボル・テーマソング』という不可思議な肩書だけが残されたんです」(前出のアニメサイト編集者)

 じつはこの“不採用劇”には、大人の事情が複雑に絡み合っていたという。

「宮崎監督やプロデューサーの高畑勲氏がこの楽曲に対し、どうにも“腑に落ちない”感情を抱いたことでクビを縦に振らず、最終的には一切劇中使用が認められませんでした。しかし、この歌が使われなかったことで、逆に“神秘性”が高まり、結果として安田のキャリアに強烈なインパクトを残すことになりました」(同アニメサイト編集者)

 安田はその後、1984年だけで5枚のレコードをリリース。

 主演映画『トロピカルミステリー 青春共和国』にも出演して写真集やドラマ、CMなど次々と露出を増やし、一気にスターダムを駆け上がっていった。

 芸能ジャーナリストの平田昇二氏は語る。

「安田さんは中学生の時にスカウトされて芸能界入りすると、1981年にCMでデビュー、翌82年にドラマ『ホーム・スイート・ホーム』(日本テレビ系)でドラマ初出演を果たします。『風の谷のナウシカ』リリース後も女優、歌手として活躍し、1989年に主演した『同・級・生』(フジテレビ系)がヒット。その後も『キモチいい恋したい!』(同)や『素顔のままで』(同)などのトレンディーで存在感を放ち、中森明菜さんとダブル主演した『素顔のままで』は最高視聴率31.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の高視聴率を記録しました。私生活では86年公開の映画『そろばんずく』で共演した木梨さんと結婚し、3児の母に。2人は芸能界でもおしどり夫婦として知られています」

 安田が歌う『風の谷のナウシカ』は当時、オリコンシングルチャートでも10位にランクインするなどヒットを飾ったが、音楽誌のベテランライターはこう話す。

「当時の彼女の歌唱力については今も賛否が分かれています。「“ナウ〜シカ〜”の“ナウ〜”の部分が“伝説”と揶揄される一方で、その浮遊感のある声質と透明感が“ヘタウマ”の代表格として再評価されています。これまで同曲を多くのアーティストがカバーしてきましたが、歌の上手さはあっても、あの空気感までは再現できていません」

 スクリーンで「ナウシカ」を観るために日本からわざわざ台湾を訪れたという人もいたようだが、当時を知るオールドファンにとっては安田の美声は「もし本編に入っていたら……」と、今なお胸の奥で静かに鳴り続ける“幻のメロディー”なのかもしれない。

(取材・文=サイゾーオンライン編集部)

By Admin