• 日. 8月 3rd, 2025

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粗品に酷評されたコムドットが踏み込んだ“芸人の領域” 識者が指摘する「唯一評価できる点」

サイゾーオンラインより】

 霜降り明星の粗品が、人気YouTuberグループ「コムドット」の“漫才”を酷評したことが話題になっている。コムドットに限らず、粗品はYouTuberに対して「面白くない」と批判的なスタンスを取っているが、なぜそのような対立の構図を煽っているのだろうか。

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「将棋の解説のほうがおもろい」粗品がコムドットの漫才を酷評

 コムドットは6月に横浜アリーナで開催されたイベントで、メンバーのやまととゆうたが漫才に初挑戦。2人が出会った小学校時代の担任の先生の名前からコンビ名を「原ちゃんず」とし、やまとがツッコミ、ゆうたがボケを担当。漫才は「もしYouTuberになっていなかったらどんな職業につきたかったか」などのテーマで進行した。

 7月中旬に公開されたYouTube動画では、イベントの1ヵ月前より準備を始めるところから本番の様子までが公開された。これに対して、動画のコメント欄では「二人の漫才めっちゃ面白かった!」「やまととゆうたの漫才最高すぎる!」などとファンからの称賛が集まる一方、「漫才ってレベルじゃない、雑談かなんかだと思う」「漫才師へのリスペクトの無さが伝わりました」といった批判も多く寄せられ、物議を醸していた。

 そんななか、粗品は7月28日に公開したYouTubeの人気企画「1人賛否」でこの漫才に言及。最初は「本当にね、素晴らしかったですよ、漫才」「良かったよ」と褒めていたが、お決まりの「ただぁ!」のセリフの後に、「今まで見た、人が2人以上でしゃべってる映像の中で一番おもんなかった」「5歳のときに見た、将棋の解説とかの方がおもろかった」などと酷評した。

 さらに粗品は「芸人のネタとかをパロディしてたんかな。まぁだから『文化祭』だよねっていう話で」「言うたら格が違うから、けちょんけちょんにこき下ろすほどでもない」などと、漫才としてすら見ていない様子で切り捨てていた。

 これを受けて、やまとはSNSで「横浜アリーナで披露した漫才が粗品さんから酷評されていることが話題になっていますが、人生初の漫才をM-1チャンピョンに評価していただけたこととても光栄に思ってます」と反応。「でもやっぱり昔からお笑いが大好きで本気で作ったネタだから悔しい リベンジ欲メラメラ」と、再チャレンジの意欲を示唆した。

 また、やまとは粗品に乗じて酷評を書き込む一般のユーザーに対して「あとこの際だから聞きたいのですが、『床見てた方がおもろい』って何万回も擦られたネタを堂々とコメントする人は面白い人であってますよね?」「誰かが悪く言われてることを楽しいと感じるなら、それは確実に人生が腐り始めている証拠です 他人軸じゃなくて自分軸で生きろ」などと反発している。

コムドットの漫才で「唯一評価できる点」とは?

 プロの芸人である粗品が、なぜコムドットの漫才をここまで酷評したのか。その背景について、お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏はこのように指摘する。

「粗品さんはプロとして、コムドットの漫才らしきものに対して『ナメるなよ』という気持ちが強くあったと思います。特に、ナダルさんの持ちギャグをパクるなどしたところは、漫才らしきことをやる上でのお笑いに対するリスペクトのなさを感じたのではないでしょうか。

 私自身も残念ながら、コムドットの漫才らしきものを面白がれる感性を持っていませんでした。特に、やまとさんがギャグをやって『これ、リハで一回もウケなかった』と言ったところは、冷んやりするものがありました。この言葉は、ネタとして面白い要素がたくさんある中で、一箇所だけどうしても笑ってもらえない部分があるときに使う自虐フレーズです。でもそもそも、ストーリー自体が面白さを欠いているため、自虐フレーズが成立していません。そういった部分は、『いろいろ勘違いしている』と思われても仕方がないのではないでしょうか。

 ただ、一つだけ肯定的なことが言えます。それは、面白かったかどうかや、結果がどうかは関係なく、『それをやったことがあるか』という事実の大切さです。たとえばお笑いであれば『なんらかの形でお笑いというジャンルに挑戦したことがあるかどうか』が重要であるということ。やったことがある人と、ない人とでは、大きな差があると思います。コムドットの漫才らしきものについて、酷評したり嘲笑ったりすることは簡単です。しかし、多かれ少なかれお金を取って、人前で漫才をやったという事実は、なにもやらずに酷評したり嘲笑ったりしている人よりかは『強い』といえます」

 やはり識者から見ても漫才の質はいかんともしがたいところがあるようだが、田辺氏はこのような評価も示す。

「批判された人が、『だったらお前がやってみろ』と反論するやり方は好ましくありません。それがまかり通ると、世の中の仕組みが壊れてしまいます。それでも『なんであれ、やったことがあるかどうか』は、いざというときの説得材料になります。

 かくいう私も、10年ほど前は毎月、地下の大喜利イベントに出演してプロの芸人さんと戦ったりしていましたし、今でもたまに大喜利イベントに出たりしています。当時はイベントの主催者に乗せられて、ネタとは到底言えないほどのピン芸を何度かやったことがありました。それらが笑えるものであったかどうかは別として、多少なりともお金をいただいて、人前でそういうことにチャレンジした経験は、今、こうやってお笑いのことについて記事を書いている自分の背景の一つになっています。いつかは賞レースの予選に出てみたいな……いや、出ないといけないのではないかなとさえ思っています。そういう場に立つ人の気持ちを少しでも理解できた方が、ちゃんとモノが言えるからです。

 その点でコムドットの漫才らしきものに対し、一つも笑った箇所はなかったものの、『それをやった』という事実は評価したいです。それでも『自分たちのワンマンイベントで漫才をやったら大ウケするんじゃないか』という浅い魂胆がうっすら見えてしまっているのは、いただけません。やるなら笑いに対して本気の人たちが集まる場で挑戦するべきかと思います。そういうところもまた、粗品さんはじめ、いろんなお笑い芸人の反発を買う材料なのではないでしょうか」

粗品がYouTuberと対立する理由

 粗品はYouTube界のトップに君臨するヒカキンに「芸人へのリスペクトがない」と嚙みついたり、テレビで「YouTuberはおもんない」と堂々と公言したりと、YouTuberへの批判的なスタンスを取っている。再生数など注目を集める部分で認めてはいるものの、「面白さ」の観点では一切評価していないようだ。

 「芸人vs.YouTuber」の対立を煽っているフシもあるが、なぜこのようなケンカ腰の姿勢を見せるのか。前出の田辺氏はこう分析する。

「粗品さんのYouTuberへのスタンスに関しては、芸人至上主義を公言されていることが大きいと思います。YouTuberの動画の企画は、それまでのバラエティのフォーマットをなぞっているものが多いです。ドッキリ企画などは特に分かりやすい例ですが、『笑える』という意味での面白さを目指した企画内容が大半を占めています。ほとんどのYouTuberがお笑いをモデルケースとしてやっている以上、お笑いが本職であり、芸人至上主義を掲げる粗品さんが、自分の物差しでそれらを計るのは当然な気がします。

また、浅いところで笑いをすくっているにも関わらず、そんなYouTuberたちを『面白い』と評する視聴者やファンに対しても疑問を持っているのかもしれません。粗品さんは理論と技術で笑いを生み出す方ですから、見よう見まねとノリで笑わせるYouTuberや、それで安易に笑う視聴者への抵抗が強くあるのではないでしょうか」

 粗品のYouTubeに対する考え方も影響しているようだ。田辺氏が続ける。

「YouTubeは、賞レースや地上波番組などで結果が出せずに脱落したり、不祥事で地上波に出られなくなったりした芸人たちの再起の場にもなっています。粗品さんのなかには『YouTubeとはそういう場所』という考えがあるのではないでしょうか。逆にご自身は、賞レースでも地上波番組でも頂点を極めながら、YouTubeにも参入し、そこでも好成績を残しています。だからこそ、YouTuberの存在そのものを懐疑的に思っているのでしょう。

 あと粗品さんは、お笑い界で天下獲りを目指していらっしゃいますが、それだけにとどまらず、YouTubeなどさまざまな領域も含めた総合王者になろうとしているのではないでしょうか。すべてを掌握するための一つとして『芸人vs.YouTuber』の構図を仕立て上げているのかもしれません」

 千鳥の大悟はトーク番組でYouTuberについて、「自分だけを見に来る人を笑わせるから、(芸人とは)笑かすための戦い方が違う」と評していた。舞台などで「自分たちのファン以外のお客さん」も笑わせないと売れない芸人と、動画を見に来たファンを相手にするYouTuberは、そもそも戦い方の構造が違うということのようだ。

 そういう意味では、芸人とYouTuberは「別物」といえそうだが、今回はコムドットが大会場での漫才挑戦で「芸人の領域」に安易に踏み込んだことで、粗品から手痛いしっぺ返しを食らったといえるのかもしれない。

(文=佐藤勇馬)

協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。

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