【サイゾーオンラインより】
藤子不二雄Aによる不朽の名作『笑ゥせぇるすまん』シリーズの実写ドラマがAmazon Prime Videoで独占配信されている。主人公・喪黒福造はお笑いトリオ・ロバートの秋山竜次が演じており、ネット上では見事ななりきりぶりに好意的な声が多く上がっている。アニメ版声優の声に「似ている」との声も多いが、業界関係者は秋山の演技をいったいどのように見ているのだろうか。
藤子不二雄A『笑ゥせぇるすまん』のあらすじと概要
『笑ゥせぇるすまん』は、謎のセールスマン・喪黒福造が、悩める現代人のさまざまな“ココロのスキマ”を埋めるためのサービスを無償て提供するが、約束事を破ったり忠告を聞き入れなかった場合にその代償を負わせるというブラックユーモア作品だ。
1968年に小学館の漫画誌「ビッグコミック」に読み切り作品『黒イせぇるすまん』として掲載後(「藤子不二雄」名義)、69~71年まで実業之日本社の「漫画サンデー」で連載を開始。89年10月にはTBS系でテレビアニメ化を果たし、『笑ゥせぇるすまん』に改題された(以降は「藤子不二雄A」名義)。
その後、「中央公論」(中央公論社)での連載を経て、90年代後半~00年代初頭にかけて『帰ッテキタせぇるすまん』、『踊ルせぇるすまん』とタイトルを変更しながら、「漫画サンデー」「コミック伝説マガジン」(実業之日本社)で連載。アニメ放送から28年が経った2017年には、TOKYO MXほかにて『笑ゥせぇるすまんNEW』として再アニメ化している。
実写版『笑ゥせぇるすまん』、ロバート・秋山の喪黒福造に「再現度高すぎ」の声
「実写ドラマが制作されるのは、初代・喪黒役声優の故・大平透氏(16年に死去)が着ぐるみに声をあてる形で演じた92年の2時間スペシャルや、99年にテレビ朝日系で放送された伊東四朗主演の連ドラに続いて3度目。今回は、原作を現代的にアップデートした回や、完全オリジナルストーリーの全12話で構成され、秋山が主演を務めているほか、山本耕史、斉藤由貴、千葉雄大、本郷奏多、あの、黒島結菜、井桁弘恵、髙嶋政伸、中川大志、仲間由紀恵、國村隼、勝地涼、濱田岳、小日向文世ら豪華俳優陣が各話に登場しています」(芸能ライター)
7月18日の配信開始に先駆け、6月20日には公式SNSにてディザー映像が解禁。しかし、その時点では喪黒役は明かされておらず、映像に映っていたのはシルエットや名刺を持つ手元、後ろ姿のみだったため、ネット上ではいったい誰が主役を演じているのかと予想合戦が白熱。お笑い界からは、秋山やバナナマン・日村勇紀、ドランクドラゴン・塚地武雅、サンドウィッチマン・伊達みきおらの名前が上がり、俳優では連ドラ版の伊東四朗をはじめ、古田新太、佐藤二朗、小手伸也らが有力視されていた。その後、喪黒役は秋山だと明かされ、「これ以上の人選無いよなって感じで楽しみ」「コントっぽくならないか不安だけど期待」「秋山は喪黒のイメージとちょっと違う」などと、さまざまな意見が飛び交った。
「秋山といえば、『クリエイターズ・ファイル』と題した有名人やクリエイターなど架空の人物になりきる“憑依芸”シリーズでおなじみ。コントで鍛えた演技力を生かして俳優としても活動中で、24年放送の『光る君へ』でNHK大河ドラマデビューを果たし注目を集めました。芸達者な秋山は今回役作りをする上で、初代・喪黒役の大平透さんを意識したと明かしており、実際、ドラマを見た人から『話し方や笑い方が大平さんにかなり似てる』『アニメの声まんま』『再現度が高すぎる』との反響が多数寄せられています」(声優ライター・勅使河原みなみ)
しかし、秋山の怪演を評価する声は多い一方で、秋山自身のキャラクター性の強さやコメディ色の強いストーリー展開も相まって、原作やアニメファンからは、「秋山がいつもの感じでコントのキャラやってるだけ」「ダークでブラックなのを期待してたのに完全にコント」「原作知ってる人は、割り切って見たほうがいいと思う」と厳しい意見も。作品自体の評価は、星「5」のうち「3」(8月22日午後9時時点)とイマイチだ。
初代・喪黒福造、大平透氏は「唯一無二」! 二代目・玄田哲章は「バランスがいい」――アニメ版声優たちの業界評
配信開始前のほうが盛り上がっていた感のある今回の実写化だが、アニメの制作会社関係者は、秋山の演技について以下のように評す。
「かなり大平さんを意識して声を作っているのが感じられました。そもそも、“顔出し”の演技と、声優による“声だけ”の演技とでは、表現の仕方が異なりますし一概には言えませんが、今作の秋山は『頑張っている』という印象で、悪い印象は受けません。ただ、大平さんの独特の低いトーンの声質と、不気味さの中にクスッと笑えるようなコミカルさを含んだ演技は、再現のハードルが高く、プロの声優でも誰もマネできない、唯一無二のものです」
なお、17年放送の『笑ゥせぇるすまんNEW』では、16年に亡くなった大平氏に代わり、玄田哲章が喪黒役を務めているが、彼は「先代の演技をリスペクトしつつ、自分らの演技をバランスよく取り入れている」とのこと。
「玄田さんは大平さんよりも声のキーが高いものの、その個性を生かして新たな喪黒を作り上げました。玄田さんも大平さんの演技にある程度寄せてはいますが、あまりとらわれずず、自分なりの喪黒を演じています。こうしたキャラクター作りができるのは、玄田さんの高い演技力とプロ意識の賜物。“大平さんの喪黒福造”が世間に浸透している中、役を引き継ぐプレッシャーは非常に大きかったでしょう。多くの人がイラストを見ると自然と先代声優の声を思い浮かべるため、後任声優はどうしても寄せた演技をせざるを得ません。しかし、そこはプロですから、単なる“声マネ”ではなく、自分なりの表現をしたいという気持ちがあるはず。玄田さんの喪黒はそのバランスが非常にうまく取れた良い例だと思います」
Amazon Prime Videoでは、そんな2人が主演するアニメ版『笑ゥせぇるすまん』のデジタルリマスター版と『笑ゥせぇるすまんNEW』も配信中だ。秋山が好演している実写版と併せて見れば、より作品を楽しめるだろう。