【サイゾーオンラインより】
9月19日に公開され、現在大ヒット中の劇場版アニメ『チェンソーマン レゼ篇』。出演声優たちの演技の魅力について、業界関係者たちに話を聞いた。
劇場版アニメ『チェンソーマン レゼ篇』、興行収入65億円を突破
『チェンソーマン』は、藤本タツキ氏が「週刊少年ジャンプ」(集英社)で第1部を連載し、現在はマンガアプリ「少年ジャンプ+」で第2部が好評連載中のダークファンタジー。「悪魔」と呼ばれる存在が日常に蔓延る世界を舞台に、借金取りに陥れられて命を落とし、チェンソーの悪魔・ポチタ(声:井澤詩織)と契約した主人公・デンジ(声:戸谷菊之介)が、悪魔の心臓を持つ「チェンソーマン」として蘇り、公安対魔特異4課所属のデビルハンターとして悪魔や魔人と戦う様子が描かれている。
2025年10月現在でコミックスの累計部数は3100万部を突破しており、23年10月には舞台『「チェンソーマン」ザ・ステージ』が東京と京都の2都市で上演されるなど、人気作だ。
今回の劇場版は、22年10月期にテレビ東京系で放送されたテレビアニメの最終回に続く物語で、憧れの上司・マキマ(声:楠木ともり)とのデートの帰り道に雨宿りをしていたデンジが、カフェで働く謎の少女・レゼ(声:上田麗奈)と出会い、翻弄されながら予測不能な運命へと突き進む内容となっている。
「映画は全国422館で封切られ、初日から3日間で観客動員数80万7000人、興行収入12億5100万円を記録し、9月22日発表の国内映画ランキングで初登場1位にランクイン(興行通信社調べ、以下同)しました。その後も首位をキープし、10月20日発表の最新ランキングでV5を達成。累計成績は動員426万人、興収65億円を突破しています」(声優ライター・勅使河原みなみ)
戸谷菊之介は「着実に上達」――『チェンソーマン』メイン声優たちの演技評
ネット上を見ると、実際に映画を観賞した人からは「原作の忠実さとテンポ感がしっかりしていて色々見やすかった。シンプルに100点満点の映画」「原作未履修だけど、アニメ版の続きとして違和感なく見られた」「アクションもコメディもロマンスも満載でめっちゃ面白かった」「映像も音楽もストーリーも全部よかった」と概ね好評だ。
また、「デンジの声優さんうまくなったよね」「上田麗奈さんの誘惑の演技がもう本当に本当に素晴らしすぎて完全に魅了された」「声優さんの演技がすごくよくて、マキマの得体のしれなさが際立っていて良かった」と、声優陣の演技を評価する声も多い。
主演の戸谷は17年10月にソニー・ミュージックアーティスツが主催するオーディション『アニストテレス vol.6』で特別賞を受賞し、20年にモバイルゲーム『我的起源』で声優デビュー。『チェンソーマン』で初めて主人公役を射止めた。
「当初の演技は可もなく不可もなくといった印象でしたが、作品を重ねるごとに着実に上達しています。現場で学んだことをしっかり吸収していくタイプで、監督や共演者からの指導を素直に受け入れる柔軟さもあり、今後、経験を積むことでより厚みのある芝居を見せてくれるでしょう」(音響会社関係者)
そんな戸谷が演じるデンジが好意を寄せるマキマ役の楠木も、戸谷の前年に『アニストテレス』で特別賞を受賞。17年4月期放送のテレビアニメ『エロマンガ先生』(TOKYO MXほか)で声優デビューし、20年8月に1st EP「ハミダシモノ」でソロ歌手としてもデビューを果たしている。
「楠木は自然体な芝居が持ち味で、優しく落ち着いた性格でミステリアスな魅力を放つマキマ役にも非常にマッチしていました。表現の幅が広く、静と動の切り替えがうまい点が彼女の持ち味です。作品全体のトーンに合わせた芝居を的確に行えるだけに、現場でも高く評価されています」(同)
そして、今作のヒロインともいえるレゼ役の上田は、「戸谷、楠木よりも明らかに声優としての経験値が高く、芝居の完成度も安定している」とのこと。
「11年に所属事務所・81プロデュースのオーディションで準グランプリを受賞し、翌年に同事務所に入所しています。81プロは養成所ビジネスを早くから展開しており、声優としての教育・訓練体制が整っていることから、デビュー前から基礎演技、発声、マイクワークなどの訓練をしっかり受けてきた印象。感情表現の繊細さ、間の取り方、表現力など、いずれもプロとしての成熟度を感じさせます」(同)
『チェンソーマン』とソニーミュージックの“関わり”とは?
なお、前出の勅使河原氏によると、『チェンソーマン』のアニメ化にあたり、「各事務所から候補者を募る形でオーディションが行われた」というが、結果的にメインキャスト2人がソニーミュージック所属の声優で固められたことから、当初は「『出来レースではないか』と囁かれることもあった」そう。
とあるアニメ制作会社関係者も、「実際のところ、ソニーミュージックはアニメ事業への出資や主題歌のタイアップなど作品との関わりが深く、キャスティングにも一定の影響力を持っているとみられ、戸谷と楠木の後ろ盾となったとみられるのは、ある意味当然かと思います」と話す。
「テレビアニメのオープニングテーマや『レゼ篇』の主題歌を担当したのは、ソニー・ミュージックレーベルズに所属している米津玄師ですし、レーベル間の関係性や制作委員会の構成など“大人の事情”がキャスティングに影響した可能性は否定できません。なお、ソニーミュージックは音楽メインの事務所であり、声優専門の育成システムはまだ発展途上。音楽、俳優、声優の垣根を越えてマネジメントを行う一方で、声優としての教育はやや不十分な部分もあります。戸谷と楠木は、『チェンソーマン』をきっかけに実力を磨き、次の作品で結果を出せるかどうかが真価を問われるところです。彼らが今後、声優として長く第一線で活躍するために必要なのは、所属事務所の影響力よりも、芝居を深めるための本人の努力とその成果次第でしょう」(同)
映画のヒットにより、盛り上がりを見せている『チェンソーマン』。テレビアニメ第2期の制作など、今後の展開はもちろん、出演声優たちの今後の活躍ぶりにも注目だ。