近年まで、米ショービズ界では、細い体で、肌の色は明るく、シワもシミもない若々しい外見が「美の基準」とされていた。一般層もそれに従い、やせれば、若返れば、恋愛も仕事もうまくいくと多くの人が信じていたのだ。
SNSがはやり始めた当初も、モデル体形の女性がインフルエンサーとしてもてはやされていた。しかし、オバマ政権の誕生や、あらゆるマイノリティを支援するレディー・ガガらセレブの登場など多様性を求める時代が到来すると、「美の基準」が疑問視されるように。その流れで、「どんな体形、どんな外見でも美しい」という「ボディ・ポジティブ」の考え方が認知されるように。
影響力の強いセレブたちも、従来の「美の基準」に当てはまらない「ありのままの自分」を受け入れ、自信に満ちあふれた姿をSNSに積極的に投稿することで、ロールモデルとなっている。今回はそんな、「ボディ・ポジティブ」なセレブたちを紹介したい。
リゾ(33)
いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの女性アーティスト・リゾ。肉感的なボディを持つ彼女は、さまざまな角度から撮影した無修正のオールヌードを度々SNSに投稿し、ボディ・ポジティブの代名詞のようにたたえられている。
しかし、昨年米誌「VOGUE」のインタビューでは、SNSで「#bodypositive」のハッシュタグ付き投稿を見ると、やせている人が多いと指摘し、「いいのよ。みんなに参加してもらいたかったから。でも、このムーブメントで恩恵を受けるべき子が受けられなくなるのは嫌だわ」とぽつり。最近では、「『背中にお肉があって、おなかが前にたるんでいて、太ももが離れているどころか重なっちゃっているような女子。肉割れがあるような女子』が無視されているように感じる」との見解を示した。
今年に入ってからも「このムーブメントでは、太っている人たちが損な役割を被っている」「(嘲笑的な)ミームになったり、辱めを受けるのは太っている子たちだわ」と批判。「ボディ・ポジティブ」が正しく広まってほしいという切実な願いを語った。
ジョナ・ヒル(37)
俳優のジョナ・ヒルは、『40歳の童貞男』(05)などのコメディ映画で頭角を現し、『マネーボール』(11)や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、順調にキャリアを重ねている。彼は長年、太めであることがコンプレックスだと公言していて、11年には、シリアスな役も演じられると証明するため、大幅減量に成功したこともあった。
今年2月、彼がサーフィンを楽しんでいる姿をパパラッチされた。中には、ボディスーツを脱いで半裸になったときの写真もあり、ジョナは自身のインスタグラムでこのカットを紹介し、「30代半ばまでプールでシャツを脱げなかった。家族や友人の前でもね。マスコミに何年も体形についてバカにされたから、子どもの頃よりも自信をなくしてしまって、ますます脱げなくなっていたんだ」と明かした。
37歳にして自分を受け入れ、世間の目が気にならなくなったとし、「プールでシャツを脱げない子どもたちへ。君は素晴らしいし、最高だし、完璧なんだよ。だから楽しんでほしい」と呼びかけた。
ジョナは、8月にボディグローブというブランドのロゴに「BODY LOVE」という文字を入れたタトゥーをお披露目。「腹筋が割れたマッチョな体形じゃなくても大丈夫」と呼びかける、ボディ・ポジティブな男性セレブだと高く評価されている。
アシュリー・グラハム(33)
20年10月、「裸のビッグガール」という一文を添えて、自撮りオールヌード写真をインスタグラムに投稿したアシュリー。第一子を妊娠した際にできた妊娠線がバッチリ見えるように撮影したショットで、多くの称賛を集めた。
しかし、この「ビッグ」という言葉を自虐だと受け止めたファンもおり、「ビッグガールだなんて。誇り高く超セクシー、美しくナチュラルなカーヴィーガールにしか見えないわ」といった不満げな書き込みを残した人も。これにアシュリーは、「あなたが言いたことはわかる。でも私のようにビッグ=ポジティブ、愛と捉えることもできるのよ。私は、自分のビッグで強くて美しいボディが大好きなの」と諭していた。
そんなアシュリーだが、今年受けた米誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」のインタビューで、“プラスサイズモデル”というレッテルを貼られることには、もう「うんざりだ」と発言。「体形のことばかりを質問されるが、自分はリアルなボディを見せているだけ。こういう女性もいるのだと、いいかげん認めてほしい」と熱弁した。
7月には第二子妊娠を発表し、インスタグラムでは日に日に大きくなるおなかを誇らしげに披露している。
ポーリーナ・ポリスコワ(56)
チェコスロバキア出身で、1980~90年代にスーパーモデルとして大活躍したポーリーナ・ポリスコワ。今年56歳になった彼女は、同年代女性のリアルな姿をSNSやメディアで見かけないことに疑問を持ち、ありのままの自分を見せることで「年齢を重ねた自分を好きになろう」というメッセージを発信するようになった。
写真を通して伝えられる、「実年齢よりも若く見られることをよしとする風潮はおかしい、白髪やシワがあっても、皮膚がたるんでいても、ありのままの自分が一番美しいのだ、自信を持って愛すべきだ」という彼女の主張は多くの女性に響いた。
自撮り写真を見て落ち込む日もあるが、すべてをインスタグラムにさらすことにより、明日はもっとポジティブな自分になれるよう努力しているそう。
スザンヌ・ソマーズ(74)
1970年代にセクシー女優として活躍。伝説的青春映画『アメリカン・グラフィティ』(73)にも謎の美女役として登場し、人気を博したスザンヌ。
彼女は中年期に入ると、エクササイズから美容ドリンク、美顔器など、あらゆるアンチエイジング法を取り入れ、自分でも販売。更年期には、ホルモン補充治療により若返りできると唱えることもあった。しかし、アメリカの中高年女性からは絶大なる支持を受け、アンチエイジングのカリスマとしてあがめられるように。ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』でも、性に奔放なサマンサというキャラクターが信奉している女性として描かれ、話題になった。
そんなスザンヌのボディ・ポジティブな写真が注目されるようになったのは2019年。73歳の誕生日にオールヌードで草原にあぐらをかいている写真を、「バースデー・スーツ(生まれたままの姿)を着た73歳の私」という一文と共に、インスタグラムに投稿したのだ。
アンチエイジングのカリスマが70代のありのままの姿を見せたこと、2000年代に乳がんを患い、乳房再建術を受けていたことも大々的に伝えられ、最高にボディ・ポジティブな写真と称賛された。