発売中の「婦人公論」(中央公論新社)の9月28日号、今回の特集は「友達は、歳をとるほどありがたい」です。同誌によれば「年齢を重ねるなかで友達はよりいっそう代えがたい存在になる」とのこと。
数々の業界人と友情を築いているテレビプロデューサー・石井ふく子氏(95歳)が語る「友だち付き合いの哲学」や、友人と連絡を取るためにスマホを持つべきか? など60代以上特有のお悩みに答える「誌上相談室」など充実の内容で、シニアの友情に迫っています。男女の友情は成立するのか? といった永遠の問いにも触れている同誌の中身、さっそく見ていきましょう!
<トピックス>
◎田村セツコ/水森亜土 なかよし二人の往復書簡
◎読者体験手記 男友達は、いくつになっても厄介で
◎田中圭×中谷美紀 夫婦の衝突を避ける必殺技は?
水森亜土の手紙「キャッホーイ!! 節っちゃん」がスゴイ!
特集内の企画でもっとも興味深かったのは、1938年生まれの田村セツコ氏と1939年生まれの水森亜土氏による往復書簡「なかよし二人の往復書簡」です。二人はともに60年代からファンシーな少女雑誌の表紙などで活躍し、今も現役の80代イラストレーター。お互いにあてた手紙が公開されているのですが、独自の世界観にあふれていて、読みごたえがあります。
二人の友達付き合いはいつから始まったのか? 現在はどんな交流があるのか? など具体的なことには一切明らかにされません。「何十年のおつきあい」(田村氏)「付かず離れずのゼツミョウな関係。そこがいいんよねッ」(水森氏)などと触れられるのみで、細かいことは謎に包まれています。
特に水森氏の手紙「キャッホーイ!! 節っちゃん」は、ファンシーかつミステリアス。書き出しでは「How are ya? この頃、どっか痛いとこないの? 私はあります。腰や肩かな」と体調を自己申告。続けて、いつのことか定かではありませんが、田村氏にスカートをめくられた思い出を回想。「(節ちゃんは)私のフトモモの長いスパッツを見て、ワー、ワーッ、キャーと大きな声で笑ってくださったのでス。ギク! グサッ! ブーッ! となっている私をそのままにして、社交的でチャーミングな節っちゃんは、アッと言う間に他の人の輪の中へ!!」「もともと社交的ではない私(!?)は(ホントよ)、ブーッ! ムッとなって、ただ暗い気持ちで帰りました」とつづっています。
かなり「ブーッ!」となったことが伝わってきます。カタカタを多用する文章が一周、二周まわってなんだか新しい。
編集部からは「ずっといい関係でいる理由が伝わってきます」とのコメントが添えられていましたが、いえ、それは伝わってはきません。むしろ、お二人にしかわからない特殊な関係が築かれているのでは……と感じる濃い往復書簡でした。
次は、読者から寄せられた体験手記のコーナー。今回のテーマは「男友達は、いくつになっても厄介で」です。紹介されているのは64歳女性と70歳女性の二通。
64歳女性のほうは、亡き夫の墓をお世話してくれた石材店の営業マン(同い年)と、いつしか食事やカラオケに行く関係に。女性は「男友達」という認識だったが、営業マンからのLINEは親密さを増し、やがて「つきあってほしい」と送られてきたそう。「男の人は親密になると、どうして一線を超えたがるのだろう。そして、なぜ恋人か他人かの二者択一にこだわるのか」と悩んだ女性は、結局おつきあいすることに。しかし、交際3年がたった今も、時々「あのままいい男友達として続けられたらそれだけでよかったのに」と思うとのこと。
もうお一人、70歳女性の場合は、いつも割り勘で「割り勘男」と呼ばれる高校時代の同級生がお相手。その割り勘男と二人きりで居酒屋で飲むことになった女性。帰り道で割り勘男に手を握られ、「いやー。一度君と手をつないで大通りを歩いてみたかったんだ、昔から」と言われたそう。「割り勘男、70歳。青春一直線モード、恋愛モードどっぷりである」という冷静な描写がお見事です。その後も割り勘男からは何度か電話があったそうですが、一切出ていないとのこと。
10代20代でぶち当たりがちな、“男女の友情は成り立つのか問題”。婦人公論世代になってもその問題は解決しないということが伺える読者手記でした。
最後に見ていくのは、田中圭×中谷美紀の対談「夫婦の衝突を避ける必殺技は?」。夫婦役でダブル主演を務める映画『総理の夫』(9月23日公開)のPR対談なのですが、二人のかみ合わなさが、よい味を出しています。
「中谷さんは言葉遣いがとてもきれいで上品なので、どう接すればいいのかとドキドキしていたんです。(中略)たまに、お話が難しくて、『今の、どういう意味だったんだろう』ってなることもありました(笑)」と言う田中。
撮影について「いや~、待ち時間が長かったですよね」と言えば、中谷からは「え? むしろ短いほうだと思ってました」と真逆のことを言われ、働く女性について「僕自身は女性が働くことになんの違和感もない」と言うと、「でも日本のジェンダーギャップ指数は、156ヵ国中120位、政治においてはなんと147位です」と教えられています。
細かいデータをスラスラ言えた(ように誌面では読める)中紀もすごいですが、「そんなに遅れているんだ!」と素直に驚いてあげられる田中もすごい。
最後は“何から何まで違うから絶妙のコンビネーションで夫婦を演じられた”と、うまくまとめられていました。ツーショットの写真の雰囲気にもかみ合わなさが漂っているので、ぜひ見てみては。