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KinKi Kidsドラマ『ぼくらの勇気 未満都市』、ユーモアあふれる2人の軽妙なやりとりと年相応の男の子らしさの魅力

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 新型コロナウイルスのパンデミックが起きて1年以上たつが、緊急事態宣言やワクチン接種をめぐる悲喜交々を見ていると『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系、以下『未満都市』)のことを思い出す。

 1997年に作られた本作は、感染すると大人だけが命を落とす微生物(ウイルス)が蔓延する街を舞台に、親を亡くした子どもたちが、徒党を組んで生き残ろうとする姿を描いたサバイバルドラマだ。自衛隊によって封鎖された街、姿の見えないウイルスに対する恐怖、何より先が見えない閉塞感によって疑心暗鬼に陥っている子どもたちの姿は、当時とても衝撃的だった。

 外出自粛が叫ばれるコロナ禍の現在、改めて本作を見ると身に覚えのあることばかりで背筋が寒くなる。同時に、大人がいなくなった街で子どもたちが共同生活をする姿には修学旅行のような楽しさもあり、青春ドラマとしても面白い。

『金田一少年の事件簿』で定着した「土9」

 同作の主演はKinKi Kidsの2人。正義感の強いヤマトを堂本光一、飄々とおどけているが、頭の切れるタケルを堂本剛が演じた。そして、後に『ケイゾク』(TBS系)や『池袋ウエストゲートパーク』(同)といった問題作を手掛ける堤幸彦がチーフ演出を担当している。

 本作が放送された「土9」(日本テレビ系土曜午後9時枠、現在は土曜午後10時に時間が移動)は剛が主演、堤がチーフ演出を務めたミステリードラマ『金田一少年の事件簿』の成功以降、ジャニーズアイドル主演の若者向けドラマを作る枠として定着した。

 『未満都市』もそんなジャニーズドラマの一つとして企画されたものだが、1995年に起きた阪神・淡路大震災と、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件の衝撃を物語の中に取り込むことで、社会派テイストのサバイバル青春ドラマに仕上がっていた。

 同作の舞台となった幕原は、千葉県幕張市をもじった架空の都市だが、圧巻だったのはロケ撮影を多用したクールでショッキングなビジュアル。無数の自衛隊員が子どもたちに銃を向ける姿や、ヘリで行われる食糧配給の場面はスペクタクルな映像で、テレビドラマとしては破格の豪華さだった。また、汚れた子どもたちが集団で集まっている姿はストリートチルドレンのようで、いつ暴動が起きてもおかしくない緊張感が画面から伝わってきた。この映像を見るだけでも意味のある作品だ。

 なお、KinKi Kidsの2人がドラマで共演するのは1994 年の『人間・失格~たとえば僕が死んだら~』(TBS 系、以下『人間・失格』)、96 年の『若葉のころ』(同)に続いて3作目。前2作がデビュー曲「硝子の少年」の世界に通じる、少年の繊細な内面を描いた少女漫画テイストの青春ドラマだったのに対し、『未満都市』は2人の中にある年相応の男の子らしさが全面に出た少年漫画的な作品となっていた。

 何より2人の軽妙なやりとりは物語にユーモアと救いを与えた。真面目だが抜けたところがあるヤマトに対し、関西弁でボケたりツッコミを入れたりするタケルのやりとりは微笑ましく、人が理不尽な形で死んでいく救いのない世界において、一服の清涼剤となっていた。

 劇中では、タケルがアコースティックギターで弾き語りを披露する場面もあるのだが、本作の2人は1996年10月から始まったKinKi Kids が司会を務めた『LOVE LOVE あいしてる』(フジテレビ系)等のバラエティ番組で見せる素の姿に近かったと思う。

 劇中では、街に閉じ込められた子どもたちが危機意識から徒党を組み、グループ間で抗争を繰り広げるようになる。その際に、弱くて幼い子どもが真っ先に犠牲になっていくのだが、その状況を本作は、いじめの構造に重ねて描き、「ほかに道はないんか? こっから出られへん限り道はないんかよ!」とタケルに叫ばせ、いがみ合う子どもたちに共闘する道を模索させる。これは「いじめ」をテーマにした『人間・失格』に対する返答に感じた。

 弱者が犠牲となる「いじめの構図からの脱却」というメッセージは、最終回にも強く現れていた。冬になり、気温が低下したことでウイルスはあっけなく全滅する。子どもたちは解放され家に帰されるが、事件を隠ぺいしようとする政府に反発し、ヤマトたちは幕原に残る。政府に抵抗するために廃墟に立てこもる姿は、東大安田講堂事件やあさま山荘事件といった学生運動を彷彿とさせる。

 これは学生運動末期に参加していたという、堤ならではのこだわりだろう。何より重要なのは「正義のためにカッコよく死のうぜ」という仲間の意見に反論し、幕原であったことを忘れず大人になるため、降伏する道をヤマトたちが選ぶ場面だ。おそらく堤は、どんなに無残な姿でも「生きのびる道」を子どもたちに選ばせたかったのだと思う。

  ヤマトたちは事件の証拠となる人工衛星の破片を分け合い、「20年後」に会おうと約束して別れる。

 それから20年後、続編となるSPドラマ『ぼくらの勇気 未満都市 2017』が放送された。主演はもちろんKinKi Kidsの2人。すでに芸能界を引退していた元ジャニーズJr.の小原裕貴や、当時は子役だった嵐の松本潤と相葉雅紀も出演しており、同窓会的な楽しさがドラマにはあったが、何より大人になった彼らが活躍する姿が見られたことがうれしかった。

 生き延びて大人になれば未来を切りひらくチャンスはある。コロナ禍でなかなか先が見えない今だからこそ強く染みるメッセージである。
(成馬零一)


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