• 月. 12月 23rd, 2024

犯罪データベース

明日あなたが被害にあうかもしれない

現役の皇族が大炎上するのは「歴史的なこと」? 眞子さま・秋篠宮家バッシングが象徴する「特権」と「私らしさ」の相克

「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!

▼前回▼

――前回に引き続き、皇室史上、最大の”アウト”になりかねない小室圭さんと眞子さまの結婚問題について、お話をお伺いしていきます。9月下旬、ニューヨークから日本に戻ってきた時の小室さんの姿には驚かされました。

堀江宏樹氏(以下、堀江) ポニーテールにはびっくりしました。

 長髪がダメだというわけではないのです。「皇族がたとの面会の予定はない」と聞いていたにせよ、秋篠宮家の眞子さまとの結婚のために、ニューヨークから帰国する自分の“人生の大事に、いっそうの注目を浴びることがわかっているのに、あの伸びっぱなしの髪形……。TPOの感覚がなっていないし、眞子さまにも失礼な行為だと思いました。

――帰国後しばらくしてから、襟足までさっぱりと切りましたね。短髪姿はネット上で好評だったそうですが……。

堀江 人さまの外見センスに口を挟むのは控えます(笑)。伝統的な観点からのコメントさせていただければ、と。伸び放題の髪形で、就職活動を行ったとすれば、内定先に顔も出していたということですよね? 驚きです。いくらアメリカが「自由の国」とはいえ、弁護士として生きていくことは上流社会の一員となることを意味します。

 19世紀中盤のアメリカ大統領だったエイブラハム・リンカーンは、貧困層の象徴だった丸太小屋に生まれ育ち、政治家になる前には独学で弁護士となった人なんですね。

 弁護士になって、上流社会にはじめて足を踏み入れることになった彼は、服装や髪形のTPOがなっていない! との批判を受けました。フィアンセのメアリー・トッドという女性から一番注意されまくったのですが(笑)、そのたびに、リンカーンはストレスを感じながらも改善の努力を続けました。

 社会的なステイタスにふさわしい服装を公の場でするのは、欧米社会における常識中の常識です。あの長髪で「プリンセス・マコのフィアンセ」と経歴書に堂々と記していたらしいですが……情けない限りです。

――しかし報道陣も、帰国寸前になって、あのロングヘアの映像をしつこく放送してきましたよね。

堀江 一斉砲火は怖いですねぇ。しかも、一番大炎上するであろうタイミングで公開されましたからね。使われる写真も、ポニテが乱れてボサボサになっているやつだったり(笑)。

 あれも”大人の世界の怖さ”です。マスコミ各社にはニューヨークにも駐在員がいるのです。当地で暮らしていた彼をマスコミが追いかけ続けていたことは明らかです。当初、報道陣を完全無視する小室さんの態度、かなり堂に入っていましたから。

――でも、これから眞子さんや小室さんはああいう”怖い人”たちの中に、これから放り込まれてしまうのですよね。

堀江 いくらボディガードなど付けたところで、マスコミ相手にはほとんど丸腰状態だと思います。

 一部のマスコミは、何を言われてもヘコたれない小室さん母子について語る時、「自己肯定感が強すぎる」などの言葉を使いたがりました。本来、「自己肯定感が高い」というのは良い意味しかありません。しかし小室さんのようなケースは、むしろ「自己評価だけが異様に高いから無敵」なんです。それがあの伸び放題のポニーテールなどにも表れているような気がしてならないんですよね。

――その一方、眞子さまは、複雑性PTSDになってしまわれたと公表されました。

堀江 体調不良はウソではないと思いますが、あの診断の公表は実にまずい対応でした。宮内庁に批判が殺到したのでしょう、すぐに診断名公表は「眞子さまのご意思のままに」行われたとの釈明が宮内庁からありました。すべて完全な悪手(あくしゅ)……取ってはいけない選択です。

 さらに最悪なことに、実際の複雑性PTSDはあんな症状ではありえないとする精神科医・和田秀樹さんの見解がすぐに発表されるなど、簡単にメッキは剥がれてしまいました。それも含めて、結婚に関して眞子さまが行った対応は、ほとんどすべての点で猛批判に油を注ぐような結果となっています。

――Yahoo!コメントなどを見ていたら憎悪のすさまじさに、関係のない私でさえ恐ろしくなってきました……。最悪のタイミングで、大炎上のための燃料が、眞子さまからは投下されつづけているように思えます。

堀江 はい。小室さんが霞んで見えるくらいに眞子さまは現在、大炎上中であられます。現役の皇族が、これほどまでに国民の大部分から批判されたことはかつてないです。歴史的な瞬間ですよ。

 複雑性PTSDという発表には、“正当な批判であったとしても、正論でなぐりつけるような言葉を受け続けたから、心にキズを負ってしまった。もう少し大事にして”といわんがばかりと感じる方も多かったのでしょう。

 眞子さま、そして秋篠宮家の問題を象徴する言葉として「秋篠宮家の方々はそれ(=厳重な警備や、手厚い保障など)を当たり前の特権として享受しながら、さらなる自由を主張されている」(新潮社「週刊新潮」2021年9月23日号)以上に的確なものがない気もします。

――学習院OGでジャーナリスト・藤澤志穂子さんのコメントですね。以前はたしか秋篠宮家は世間から礼賛されていましたよね。そのムードは一変してしまっています。

堀江 はい。ざっくり資料を見渡した限りでは、15年前後が、手放しの礼賛からバッシングの対象に傾いていった転換点だと思われます。

 「文藝春秋」14年5月号(文藝春秋)、“秋篠宮さまと親交の深い”江森敬治さん(毎日新聞編集委員)による寄稿をまとめると、秋篠宮家は少ない人数の宮内庁職員の手でコンパクトに運用されているが、それは彼らへの感謝を忘れない宮家と職員の連携がうまく取れているからできること。

 これに限らず、秋篠宮家は質素倹約を重んじておられること。また、情愛に満ち、教育熱心な紀子さま、(眞子さま・佳子さまと同じように)悠仁さまにも自主性を重んじる教育を望む秋篠宮さまのお姿が描かれています。

 こういう論調が一昔前までは中心だったとは思うのですが、秋篠宮家の自主性を重んじる教育が、不干渉主義すぎたのではないか……と懸念する記事が目立ちはじめるのが15年以降ですね。

――15年に、なにかきっかけがあったんでしょうか?

堀江 15年には、国際基督教大学の学生だった佳子さまが、タンクトップ姿の私服で通学する様子に批判が集まりました。

堀江 その流れの中で17年、眞子さまが小室圭さんとの結婚が内定したとの報道が流れた直後から、小室家の金銭問題や数々の問題が噴出しはじめた。また、19年には同じく佳子さまが「へそ出しダンス写真」を公開されて批判を浴びる中で、秋篠宮家では将来の天皇とも目される悠仁親王に、適切な教育が本当に行われているのだろうか? という懸念が国民の中で高まり、いまや爆発してしまっている状況ではないでしょうか。

 しかし、礼賛から批判へのターニングポイントは、眞子さまと小室圭さんの婚約発表だったと思われます。

――海外での報道も気がかりなものばかりです。「天皇陛下の反抗的な姪」などといわれてしまっているらしいですね

堀江 王族・皇族は世界中の例をとっても”正しさの象徴”であるべきなのです。

 絶対王政の時代……たとえば17世紀のフランス国王ルイ14世の時代では、国王は神の化身である、と。一方、庶民の立場の説明として、“初期のキリスト教徒はネロのために祈ることにおいて、その義務を果たしたのである”という当時の言葉があります。

 わかりやすくいえば、国王が暴君でも、それは国民に与えられた神からの試練としてありがたく受け取り、国王が持ち直すよう、祈りなさい……とまで説かれていたのですけれど、革命を経験した後の世界では王族・皇族の問題行動に寛容でいてくれる国民はいません。

 また、皇族は日本の顔でもあります。正しさを体現すべき皇族がモラルなき行為を連発中の問題家庭に嫁ぐことに執着し、反対を押し切る際に複雑性PTSDまで発症したという “ストーリー”が全世界に発信され、最悪でした。「皇室外交」なる言葉もありますが、眞子さまの例は日本や日本人、日本文化などのブランド性を全世界に向けて貶めたと思われます。

――しかし、ひとりの人間として心に傷を……という眞子さまの言葉には胸が痛くなるところがありました。皇族だけど、やはり人間ではあるわけで。

堀江 そうなんですよね。それでも「公」を生きるべき皇族でありながら、「私」を求めすぎているのでは、という批判は正論であり、それゆえに看過できません。

 人気のある男性皇族、王族はスーパースターの扱いになることが多く、多少、おイタがすぎても許される部分はあるのです。「王様らしい」などといって。その時の、その方の好感度に左右されますが。

 ところが、女性の皇族・王族が、同じようなことをしたり、たとえば「私らしさ」を重視するようになると、世間の批判はすさまじいものになりがちです。たとえば19世紀末のオーストリアのエリザベート皇后や、18世紀のフランスのマリー・アントワネット王妃もそうですよね。

 皇族・王族であったところで、一人の女性として幸せに生きたいという願いは当然至極ですが、「特権を享受しながら、さらなる自由を主張」と見られてしまった時点で大失敗なのです。間違えた道を突き進むのではなく、手遅れになる前に改善の努力をするべきでした。

――女性皇族は「公」に尽くすしかない、と。それはあまりにも残酷に思えますが。

堀江 ジェンダーの問題もあるかと思います。(元)麻薬中毒患者のシングルマザーから、ノルウェー王室の将来の王妃、つまり王太子妃になったメッテ=マリット妃のお話もこの前にしましたが、彼らの性別が入れ替わっていたのなら……。

 たとえば、ヨーロッパの王室では女性が国王として即位する「女王」が認められるケースが多めです。しかし、ノルウェー王室の将来の女王が、麻薬の売人で、シングルファーザーの男性との結婚を望み、またその男性が会見で泣いて過去を反省したところで、国民の支持は、メッテ=マリット妃がそうだったように急激に上がってくれるのものか? という懸念はあるような気がします。

 たとえば、小室さんが、今度の会見で泣きわめいて過去を悔いたところで、評価が上がると思いますか?

――うーむ、たしかに難しいですね。よしながふみの『大奥』(白泉社)という漫画も、史実をベースとしながらもキャラクターの男女を逆転させていたのですが、側室(男性)をとっかえひっかえする行為を将軍(女性)がしていると、なんとなく心の闇を感じてしまったりしました。

堀江 そうですね。綱吉などのエピソードはとくに……。それはともかく、眞子さまと小室さんのケースは、メッテ=マリット妃に比べると解決は本来、容易だったのです。

 小室さんは問題行動が多すぎるお母様のいる家庭の出身者かもしれないけれど、母親を諭し、懸命に正しい方向へ導こうとしている “苦労人の好青年”との印象を国民に早期に与えることができていたら、こんな悲惨なことにはならなかったでしょう。

 そして、過去のある男性とあえて結ばれ、支えていく覚悟の眞子さまはご立派という印象も与えられていたら、ご自身や、日本の皇室の株も上がっていたかもしれない。眞子さまは現在でもそういうふうに、ご自分や小室さんのことを世間に評価してもらいたいのでしょうが……。

 もう少し、宮内庁の方が世論を読んだ対応をしてくださっていたら……と嘆かわしいですね。

――次回は宮内庁の一連の対応について考えます。10月25日公開

By Admin