■小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A
Q.子どもが、卵や小麦などの食物アレルギーにならないためにできることってあるでしょうか?
A.肌を清潔に保って保湿し、離乳食を適切な時期に始めて様々なものを食べさせることです。
子どもの食物アレルギーを心配する保護者は多いのですが、アトピー性皮膚炎と同様に、間違った情報が多く流布されているので注意が必要でしょう。例えば、食物アレルギーを予防する方法として、「お母さんが妊娠中に代表的アレルゲンを摂取しないようにすればいい」「できるだけ長く母乳だけで育て、離乳食を遅らせるといい」「離乳食を始める前にアレルギーの血液検査をするといい」などという説がありますが、どれも間違いです。
まず、 妊婦さん自身に食物アレルギーがない場合、妊娠中に代表的なアレルゲンを摂取しないことに意味はなく、ただ栄養バランスが偏りやすくなるだけ。デメリットしかないので、やめておきましょう。次に生後5〜6か月からは母乳やミルクだけでは栄養が不足しますから、成長のためには必ず離乳食を開始すべきです。また以前から、アメリカやヨーロッパ、日本の小児アレルギー学会は、離乳食の開始を遅らせたり、特定の食材をあらかじめ除去しても、アレルギーの発症を防げないと言っています。
そして、離乳食を始める前にアレルギー検査をする必要はありません。なぜなら、どんな食材でもアレルギーを起こす可能性はあり、すべての食品を調べるわけにはいきませんし、たとえ血液検査で「アレルギーあり」と出ても、食べたときに症状が出なければ食事制限をしないほうがいいので意味がないのです。特に乳児では検査結果と症状が一致しないことも多く、大事なのは症状のほう。実際に食べさせてみないとわからないのです。
では、何もできないかというと、じつはできることはあります。ひとつは、なるべく赤ちゃんの頃から肌を清潔に保ち、保湿することです。これは皮膚のバリアの隙間から食べ物などが入ると、それに対するアレルギーが起こることがあるためです。食後に口のまわりについた食べ物を拭くとか、なるべく食べ物のついた手で触らないとか、毎日入浴させるとか、普通のことで大丈夫。保湿は、お風呂上がりにワセリン等を塗りましょう。
もうひとつは、血縁者に食物アレルギーがなくて、湿疹のない子どもには、生後5〜6か月からなんでも食べさせること。これは特定の食品を避けたりせず、乳児期から様々なものを食べさせることで、むしろ食物アレルギーになるリスクが下がることがわかっているからです。もちろん、アレルギーが起こりやすい食品は最初は少量を、小児科の開いている平日の日中にあげると安心です。湿疹が出る、吐いたり下痢をしたりするなどのアレルギー反応が出たら中止してください。
なお、すでに重篤なアトピー性皮膚炎がある場合は、まず肌の状態を安定させることが先決です。早めに小児のアレルギー専門医に相談しましょう。
<今回のポイント>
○食物アレルギーのデマは多いので要注意
○母が妊娠中に除去食をとっても意味がない
○離乳食はむしろ遅らせないほうがいい
○皮膚を清潔に保って保湿をしよう
森戸やすみ『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK ~いつものケアから不調のときの対処法まで』(内外出版社)
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