10月27日、横浜流星主演映画『嘘喰い』(2022年2月11日公開)の続報として、白石麻衣、本郷奏多、村上弘明、三浦翔平に加え、Mr.Childrenのボーカル・桜井和寿の長男としても知られる若手俳優・櫻井海音の出演が発表された。
もともと2019年結成のバンド「インナージャーニー」のドラムス・Kaitoとして活動していたが、昨年5月に“櫻井海音”名義で公式サイトを立ち上げ、俳優およびタレント活動を開始。昨年8月~11月に恋愛リアリティ番組『オオカミくんには騙されない』(ABEMA)に出演してイケメンぶりが注目され、NHK連続テレビ小説『エール』、スペシャルドラマ『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』(TBS系)、今年7月期の『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)など、脇役ながらほぼ途切れることなく話題作への起用が続いている。
また、現在は連続ドラマ『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京系)で、主演・大原櫻子の相手役として出演。櫻井は、大原演じる芸能マネジャー・冴島千歳との禁断の恋に揺れる、ブレーク間近の嘘つきな俳優・藤代瀬那を演じている。
ハイペースで出演作を増やしている櫻井だが、演者としての魅力はどんなところなのだろうか。「エイベックス・アーティストアカデミー」のシアター総合コースディレクターとして演技講師も務める演出家で俳優の秋草瑠衣子氏に、『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京系)の第5話(11月4日放送)をなぞりながら解説してもらった。
秋草氏 櫻井さんは表情の作り方が良いと思います。顔全体というか、主に「目」ですね。櫻井さんの特徴として、“口元があまり動かない”というのがあるので、顔の筋肉の全体がわかりやすく変化することはあまりないのですが、繊細な感情の動きをちゃんと作っているので、それが目に表れています。
たとえば第5話の冒頭、新しいマネジャーを紹介されて、千歳と顔を合わせるシーンでは、目に「ヤバイ……」という緊張感が出ていて良いです。その後の、CM撮影中に企業の偉い人たちを紹介された際の微妙な表情も、「ありがとうございます」と声は明るいのに、目線は対象人物に合わせず、寂しそうに笑うことで不安な気持ちや寂しさを表現できています。
また、千歳の帰りが遅くてイライラするシーンでは“少し睨むような目線”から、わざとウソをつくときの“イタズラ少年のような目”になり、さらに「これ(映像資料)見てもいいですか?」と言った千歳が自分の映像を見てくれるとよろこぶシーンでは“うれしそうな目”になる。この短い時間の中で、いろいろな表情を見せてくれていて、藤代という人物の魅力が出ていると思います。
一方、藤代が発熱で倒れ、千歳に看病されているシーンでは、少年に戻ったような表情と声色で母性本能をくすぐっている感じが良いですね。20歳という若さや、まだ俳優の経歴が長くないことが、微妙な危うさや儚さ、繊細さを表現することに好影響を与えているように感じました。
秋草氏 櫻井さんの演技は、基本的にクールな印象を受けました。持って生まれた端正で儚げな雰囲気もありますが、繊細な表情の変化はシーンの必要性も理解できていると感じましたし、台詞のやりとりの中で自然に感情が移ろいでいく様を出せていたので、表情のアップのカットに強い俳優さんだなと思いました。
ただ、それに比べると、引きの画になった時に映る全身のカットが、少し説得力が弱いように感じました。今後は「立ち方」や「歩き方」でも役を表現することを、もう少し意識していくと、もっと良くなると思います。
加えて、体を使った表現や、テンションを急激に上げる必要があるようなオーバーリアクション的な芝居は、まだ苦手そうに感じました。でも、繊細な表現はうまくできているので、今後の俳優活動に期待したいですね。
20歳半ばくらいに成長した頃、体格や声色の変化に伴い演じる役どころも変化していくと思います。その頃、どんな役者になっているのか、とても楽しみです。
秋草瑠衣子(あきくさ・るいこ)
元宝塚歌劇団男役。フリーの演出家・俳優。2017年文化庁新進芸術家海外研修制度に選出され、パリにて演劇教育についての研修に励む。エイベックス・アーティストアカデミーシアター総合コースディレクター。