井口昇ワールドのヒロイン集結! 商業映画では描けない禁断の世界『異端の純愛』
個性の強い映画監督たちの中でも、より際立った異能ぶりで知られているのが井口昇監督だ。劇団「大人計画」の役者として活動する一方、自主映画『クルシメさん』(98)や『恋する幼虫』(03)はレイトショーで注目を集めた。米国のビデオメーカーの依頼を受けて撮り上げた『片腕マシンガール』(07)は、ガールズアクションものの大ブームを呼ぶことになった。 昭和特撮ドラマの世界をリブートした… 続きを読む ...
進化系ヘイトクライムを体感する92分間! 社会派スリラー『ソフト/クワイエット』
ヘイトクライム(偏見や差別に基づく犯罪)を題材にした作品は、ホラー映画『ゲット・アウト』(17)や実録映画『SKIN スキン』(19)など、現代社会の病巣をあぶり出した注目作が多い。女性監督であるベス・デ・アラウージョ監督の長編デビュー作となる『ソフト/クワイエット』(原題『Soft & Quiet』)も、その一本に数えることができる。小さな町で暮らす女性教師や主婦たちが、密かにヘ… 続きを読む ...
憎しみ合いながら、母と娘はなぜ同居するのか? 映画『同じ下着を着るふたりの女』
なんとも意味深なタイトルではないか。同じ下着を共有する女たちとは、どんな関係なのだろうか。韓国映画『同じ下着を着るふたりの女』を観ると、“ふたりの女”とは同居中の母と娘であることがすぐに分かる。しかし、母と娘の関係性は、愛情や憎悪といった言葉で簡単に割り切れるものではないらしい。父と息子とは大きく異なる母娘関係を、本作で長編デビューを果たしたキム・セイン監督は繊細かつ生々しく描き出してみせ… 続きを読む ...
役所広司&菅田将暉共演『銀河鉄道の父』 宮沢賢治はリアル“でくのぼう”だった?
視点を変えることで、それまでとは違った歴史や人物像が浮かび上がってくる。作家・門井慶喜の直木賞受賞作『銀河鉄道の父』(講談社)は、童話作家・詩人として著名な宮沢賢治の生涯を、父親の視点から描いたユニークな作品だ。「純朴な人」というイメージの強かった宮沢賢治だが、父・政次郎にしてみれば、家業を手伝うことなく浪費ばかりする放蕩息子だった。だが、そんなダメ息子のことが、政次郎は愛おしくて仕方なか… 続きを読む ...
愛を求めたチェコ最後の女性死刑囚 実録犯罪映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』
無差別大量殺人はなぜ、どのようにして起きたのか。このシリアスな問題に真正面から迫ったのが、実録犯罪映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』だ。1973年、社会主義国だったチェコスロヴァキアでトラックを暴走させ、8人を死亡、12人を負傷させた女性、オルガ・ヘプナロヴァーを主人公に、彼女の少女時代から23歳で死刑執行されるまでを克明に描いた作品となっている。 チェコ最後の死刑囚となっ… 続きを読む ...
アダルトショップを舞台にしたモンゴル映画 Z世代の青春『セールス・ガールの考現学』
モンゴルから、たまらなくキュートかつユニークな青春映画が届けられた。物語の舞台となるのはモンゴルの首都ウランバートル。人口160万人の大都市にあるアダルトグッズショップで、ワンオペ店員として働くことになった女子大生を主人公にした成長譚だ。自分の将来や「性」に関する漠然とした不安を抱える女の子・サロールの揺れ動く心理を、モンゴル映画『セールス・ガールの考現学』(英題『The Sales Gi… 続きを読む ...
イスラムの聖地で起きた娼婦連続殺人事件 ミソジニー社会の闇『聖地には蜘蛛が巣を張る』
イスラム教の聖地にて、連続殺人事件が起きた。イラン第2の都市・マシュハドはシーア派最大の聖地として巡礼者たちで賑わう一方、アフガニスタンとの国境に近く、アヘンの密売ルートにもなっている。そんな二面性を持つ大都会で、2000年~2001年に「スパイダーキラー」と呼ばれる連続殺人鬼が現れた。 犠牲になったのは、すべて女性。夜の街に立つ娼婦たちだった。まるで蜘蛛の巣に掛かるように… 続きを読む ...
凶悪事件のトラウマが伝播する社会派ホラー! シリーズ最終作『ハロウィン THE END』
世界中を震撼させてきた人気ホラーシリーズが、ついに終焉を迎えた。ハロウィンの夜、不気味なマスクを被った“ブギーマン”が殺戮を繰り広げる『ハロウィン』シリーズ。オリジナル版の公開から45年という歳月を経て、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督によるシリーズ最終作『ハロウィン THE END』が4月14日(金)より日本で公開される。 ジョン・カーペンター監督が生み出したシリーズ第… 続きを読む ...
石井岳龍、最後の授業『自分革命 映画闘争』 観客を挑発する過激なメタ構造映画
大学教授である石井岳龍監督が、キャンパス内で拳銃をぶっ放す。石井監督の5年ぶりの新作映画『自分革命 映画闘争』は、日大藝術学部在籍時に撮った伝説的なデビュー作『高校大パニック』(76)を彷彿させる過激な原点回帰作となっている。 神戸芸術工科大学映画コースの教授を、2023年3月いっぱいで退官することが決まっている石井監督。2006年から学生たちを実習指導してきた石井監督が、… 続きを読む ...
松山ケンイチ、長澤まさみが火花を散らす社会派ミステリー『ロストケア』
高齢者たちを狙った連続殺人鬼と、法の番人である検事が、真正面から火花を散らして激突する。映画『ロストケア』は社会派ミステリーとして、とても見応えがある作品だ。殺人の容疑を掛けられる介護士に松山ケンイチ、自然死に見せかけた連続殺人に気づく検事に長澤まさみ。実力派俳優同士がガチで演技バトルを繰り広げる、スリリングなサスペンスとなっている。 作家・葉真中顕(はまなか・あき)が20… 続きを読む ...